AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めている。ITやAIの技術革新の波は今後もとどまることはない。とはいえ、打つ手はあると公認会計士・税理士の藤田耕司氏は語る。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

商業登記や法人登記は自動化される可能性が

司法書士業務の自動化の可能性

 

司法書士の主な業務には、登記、相続関連業務、成年後見、民事信託などが挙げられま
す。

 

藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)
藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)

これらのうち商業登記と法人登記については、法人設立登記や役員の住所変更登記などの複雑な判断が求められない内容は、近いうちの自動化が予想されます。実際、司法書士法人の監修でAIを活用した登記サービスも始まっていて、さらなる自動化に向けたサービスが広がると思われます。

 

不動産登記に関しては、登記前の準備として当事者の実体や意思の確認、契約書への落とし込みといった業務は自動化が困難かもしれません。

 

一方で、ブロックチェーン技術を取り入れて登記申請の自動化を進める動きもあります。現在の不動産取引の決済では、資金決済後に登記申請をします。そのために、法務局での登記完了まで一定のタイムラグがあり、第三者対抗要件を具備しない不安定な状態が存在します。そこで、登記申請時ではなく、不動産取引の資金決済と同時にブロックチェーンに自動的に対抗要件具備の権利が記録されるようにして、不動産取引の安全性を高める動きが進んでいます。

 

こうして、司法書士を通さずに登記が行えるサービスが普及すれば、登記業務の相場は下がると思われます。このことを踏まえて登記以外の業務の収益拡大に向けて動き始めている司法書士も少なくありません。

 

相続関連業務の遺言書作成では、だれに何を相続させるかをクライアントからヒアリングして、その内容を単に書面にまとめるだけであれば自動化される部分もあるかもしれません。しかし相続は、人の生死や心の機微に関わる非常にデリケートなものです。そういった心の機微と家族関係に配慮した相続に関するコンサルティング業務は、AIや機械には代替されにくい分野と考えられます。

 

後見業務を遂行するには、成年後見人に選任される必要があり、法的権利の帰属主体としてBodyの要素が必要です。また、成年後見は、成年被後見人やその家族の人間性や環境を踏まえた臨機応変な対応が必要であり、Think、Humanityの要素が求められます。そのため、AIや機械による自動化は難しいでしょう。

 

信託業務に関しては、その用途や目的に応じた柔軟な設計が求められるため、依頼人のニーズと気持ちを汲み取るためにもThink、Humanityの要素が求められ、AIや機械による自動化は難しい業務といえます。

 

藤田耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー

 

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

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