入院中に大腿骨を骨折した姑。手術は成功した一方で、介護の負担が減ることはなかった。※幻冬舎ゴールドライフオンラインの人気エッセイ『嫁姑奮戦記』を連載でお届けします。

「公ちゃん、うち、一つだけ心配があるねん」

「公ちゃん、うち、一つだけ心配があるねん」
「それって何?」と、私。
「あのな、息子にまだ嫁さんおらへんねん。うち、心配で死なれへん」
「ほんなら、私、誰やの」
「あんたは、うちの世話してくれる人やろ」
「何言うてるの。私が嫁さんやんか。孫も二人居るで」と、紙にフェルトペンで簡単な系図を描いて説明する。
「なんや、公ちゃんが嫁さんやったんか。ああ、良かった。これで安心したわ」

 

もっと優しい嫁でいよう。滅多にと言うよりほとんど怒ったりしない穏やかなお婆さんである。私も見習わなければならない。

 

考えてみたら私は姑にあれこれと小言を言われたことがない。がたがた言うのはいつも私のほうだ。

 

姑の偉いところは他人に干渉をしないことだ。孫のことでも直接本人に言わず私に言う。ワンクッションを置くやり方だ。

 

私ときたら何でも本人にずけずけ言うので、傷付けもするし反発も食らう。姑のように口にチャックし、摩擦を避けるようにすれば周囲も平和なのに。

 

考えて見れば私も勝手な人間だ。自分が姑のように賢く生きることが出来ないのに、自分のやり方を強要している。

 

姑のやり場のない気持ちが「もう生きているのが嫌になった」と言う言葉になって出て来たのだろう。危険なことだけ気をつけて、もっと優しく接していきたいと思う。

 

姑にてこずり、右往左往して神経をすり減らし、毎日を送っている私は、パートながら要介護者を訪問しているプロのヘルパーなのだ。

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嫁姑奮戦記

嫁姑奮戦記

大野 公子

幻冬舎メディアコンサルティング

入院早々骨折、幻覚幻聴、物忘れ……病院を騒がせる姑と嫁のやり場のない戦い。 介護する側、される側、双方には今日に至るまでの歴史がある。 血縁だけでは語れない愛がそこにはあった。 嫁が綴った過去の日記をもとに、「…

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