先週の米ドルは、対円では104円近辺での方向感の乏しい展開が続きましたが、対ユーロではほぼ一本調子での下落となりました。本記事では、その理由について考えてみたいと思います。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

「リスクオンの米ドル売り」終了後の展開とは?

コロナ・ショック後のユーロ高・米ドル安は、NYダウなど米国株高と高い相関関係が続いてきました(図表3参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表3]ユーロ/米ドルとNYダウ (2020年4月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

このような株高、リスクオンにおける米ドル売りをもたらしたのは、これまで見てきたように、コロナ・ショックといったパニックで起こった金利差から大きくかい離した高過ぎる米ドルの是正が基本だったのではないかと、筆者は考えています。それならば、かい離の是正により「リスクオンの米ドル売り」も終わった可能性があるのです。

 

では、「リスクオンの米ドル売り」終了後の展開はどのように考えたらよいのでしょうか。

 

昨年3月のコロナ・ショック後、米ドル安が続くなかで、米ドルは「売られ過ぎ」懸念が強くなっている可能性があります。たとえば、CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=日本円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルのポジションから試算)は売り越しが2010年以降で最大規模に拡大しました(図表4参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表4]CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション (2010年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

このような米ドル「売られ過ぎ」懸念が強い状況では、米ドルは先週のように米金利上昇などの買い戻し材料に過敏に反応する可能性が高いのではないでしょうか。米株との関係も、これまでのような株高=米ドル売り、株安=米ドル買いから、基本的には株高=米ドル買い、株安=米ドル売りといった「普通の関係」に戻る可能性があるのです。

 

「リスクオンの米ドル売り」は、コロナ・ショックといった異常事態で発生した金利差からかい離した高過ぎる米ドルの是正といった特殊な現象といった面が大きかったといえます。そもそも、昨年3月のコロナ・ショック以前は、「リスクオンの円売り」が一般的でした。それが、「リスクオンの米ドル売り」に変わったワケではないということを認識すべきなのです。

米ドル・キャリー取引がもたらした「二重の利益」

ところで、「リスクオンの米ドル売り」にはもう一つの重要な側面があります。それは米ドルを売って、購入した外貨でその国の株などに投資するといった米ドル売り運用、「米ドル・キャリー取引」の影響です。

 

この米ドル・キャリー取引は、「コロナ後」の米ドル安、株高で、為替差益と株価の値上がり益といった二重の利益をもたらしました。

 

これまで見てきたように、全体的に米ドル買い戻しへ転換に向かうなら、米ドル・キャリー取引は手仕舞い、つまり株などへの投資を引き揚げる可能性があります。そうであれば、それが高値更新を続けている「無敵の株高」への影響にも注目すべきではないでしょうか。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

 

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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