新型コロナウイルス感染拡大で医療現場はひっ迫し、医療崩壊ともいわれるなど、現場の医師や看護師、そして病院に注目が集まった。全国に緊急事態宣言が出された大混乱のさなか、ある医師から一本の電話がヘッドハンターにかかってきた。「どうやら資金ショートの噂が広がり、来年の春まで持たない。紹介できる病院はないか」と。もはや病院といえども安心の職場ではなくなった。ヘッドハンターが医師の転職の舞台裏を明かす。

生き残る病院と淘汰される病院

それだけにとどまりません。社会医療法人は、UPMCを参考につくられた制度だと私は思っています。社会医療法人は税制優遇がある一方で、経営者の報酬に上限を設けるほか、利益を内部留保できず、社会還元させる仕組みになっています。

 

医療法人の内部留保はかねてより指摘されており、内部留保以外にも、経営者が利益を自分の資産形成に使うなど、社会還元がなされていないことが問題視されてきました。UPMCのように、医療産業が地域経済のエンジンになり、街づくりに貢献していくためには、医療機関が得た利益を社会に還元することが重要になります。

 

医療界では今後、社会医療法人の存在感が増してくるのは間違いありません。ただ、社会医療法人ではなくても、競争力のある優良な病院は存在します。社会医療法人以外で生き残れるのは、「地域医療構想」の中で優位性を持っている病院です。

 

地域医療構想についての詳述は省きますが、概要次のようなものです。地域医療構想とは、二次医療圏を基本に全国341の「構想区域」を設定し、構想区域ごとに高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つの医療機能について病床の必要量を推計、それに対応する医療体制を整備するために、地域の関係者が協力して医療機関の役割分担や連携の仕組みを構築する取り組みです。

 

この4つの医療機能の中で、自分たちの専門性を生かし、地域での立ち位置を明確にして健全経営を行っている一般の医療法人もあります。ですから社会医療法人が生き残る病院のすべてということではありません。

 

ここまで見てきたように、医療界では病院の再編統合が進んでいます。それに伴い今後、医師の流動化も活発化していきます。好むと好まざるとにかかわらず、医師も転職の動機がこれまで以上に生まれやすくなります。その際に、生き残る病院と、淘汰される病院が出てくる中で、どの病院で働くのかは切実な問題になります。

 

しかしながら、病院に勤務する医師の多くは、こうした病院再編の動きをほとんどご存じありません。私はここまで述べてきたことをより詳しく先生方にご説明し、先生方の今後の進路、転職先を選ぶ判断基準、意思決定をする上でのものさしを提供しています。

 

(※本インタビューは、2020年12月27日に収録したものです)

 

武元 康明
半蔵門パートナーズ 社長

 

 

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