入院中に大腿骨を骨折した姑。手術は成功した一方で、介護の負担が減ることはなかった。息子夫婦の協力によってつかの間の休息をとることができたものの、癇に障るお見舞いや姑の理解できない言動に今後への不安が募っていく。 ※幻冬舎ゴールドライフオンラインの人気エッセイ『嫁姑奮戦記』を連載でお届けします。

姑がえらく深刻な顔をして考え込んでいる。

物忘れのひどいのには呆れる。無呼吸のせいではと思い、精神科の診察の際、先生にお尋ねするとそうとも言えないと言われる。睡眠障害もひどいので、先生もどうしたら改善されるか模索されているようだ。

 

入院中は無理なように私には思えるが。先生もそう思っておられるのかもしれない。退院するまでに一度外泊して様子を見ようということになる。

 

その話を聞いてから妄想がひどくなる。私がトイレから帰って来ると姑がえらく深刻な顔をして考え込んでいる。

 

これはまたとんでもないことを言い出すぞと思っていたら案の定、「公ちゃん、うち、この工場辞めさしてもらうわ。気い使うてお給料もらうのしんどなってきたわ」と突拍子もないことを言い出した。

 

「え? 何のこと? おばあちゃん、おばあちゃんは今病院に入院しているの。ここ工場やないの。きっと、若い頃のこと思い出してるんやね」と言うと、「え? ここ工場と違うの? うちまたおかしなったんかいな」と首をかしげる。きっと看護婦さんの白い帽子や白衣が工場の作業着を連想させたのではないか。

 

テレビのドラマがそのまま妄想になったりすることが以前も何度かあった。

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嫁姑奮戦記

嫁姑奮戦記

大野 公子

幻冬舎メディアコンサルティング

入院早々骨折、幻覚幻聴、物忘れ……病院を騒がせる姑と嫁のやり場のない戦い。 介護する側、される側、双方には今日に至るまでの歴史がある。 血縁だけでは語れない愛がそこにはあった。 嫁が綴った過去の日記をもとに、「…

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