改正相続法を物語で読み解く本連載。今回のテーマは「遺産分割事件の調停」。遺産分割手続は【相続人の範囲⇒遺言書の有無・効力⇒分割協議書の有無⇒遺産の範囲⇒…】という流れで進みます。順番を前後させることはできません。各事案において争いが生じた場合、調停の申立てや裁判など他の手続きを先行して行う必要があります。※本連載は、片岡武氏、細井仁氏、飯野治彦氏の共著『実践調停 遺産分割事件 第2巻』(日本加除出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

<改正法Q&A>相手方による新たな申立ての対象は?

民法907条が認めている処分権限は、申立人のみならず、申立人以外の共同相続人にも当然認められます。したがって、申立人以外の共同相続人が、遺産の全部分割(又は当初の申立てとは異なる範囲の一部分割)を求めた場合には、遺産分割の対象は、遺産の全部(又は拡張された一部の遺産)、つまり当初の申立て部分に加え、追加された申立て部分を含むものとなります。

申立人への聴取…「申立ての趣旨拡張」を問う杉浦委員

杉浦は、真人に対し、祐人らの意向を説明した。

 

杉浦「今一度、確認しますが、申立ての趣旨を拡張して遺産全部を分割するとの申立てをするつもりはありませんか?」

 

真人「ありません。次回にキウイ畑を売却する話をまとめてほしいです」

 

杉浦「そうですか。そうすると、祐人さんらが追加の申立てをすることになります。申立書が届いたら、真人さんも申立書記載の遺産に対する認否をしてください」

 

次回期日は1ヵ月半後に指定された。第1回調停期日が終了した。

 

 

【続く】

 

 

 

片岡 武 

千葉法律事務所 弁護士(元東京家庭裁判所部総括判事)

 

細井 仁

静岡家庭裁判所次席書記官

 

飯野 治彦

横浜家庭裁判所次席家庭裁判所調査官

 

 

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本連載における「改正法」は、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成三〇年法律第七二号)」をさします。

実践調停 遺産分割事件 第2巻 改正相続法を物語で読み解く

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細井 仁

飯野 治彦

日本加除出版

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