安定的な収益が得られ資産圧縮効果も高いと、富裕層の税金対策として人気を集めている都心の新築不動産への投資。しかし都心の中古一棟不動産を主力とする、アイ・インターナショナル株式会社管理部の矢吹靖浩部長は「投資でありながら“殖やす”という視点が抜け落ちている」と指摘します。そこで税金対策だけでなく資産形成も両立する「富裕層のための新しい不動産投資のカタチ」について考えていきます。第1回目のテーマは「新築の都心不動産投資に潜む落とし穴」。 

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相続税の課税強化を機に不動産投資の節税効果に注目

2015年1月に相続税の基礎控除が引き下げられる前後から、節税に主眼を置く不動産投資がトレンドとなっている。半世紀ぶりに課税が強化されたのを受けて、富裕層の多くがこぞってその対策を講じてきたのだ。

 

相続税を計算する際、現金・預金が額面通りの評価となるのに対し、不動産は実勢価格よりもかなり割り引かれる。すぐには換金できない流動性の低さなどを勘案した税制となっている。

 

しかも、賃貸マンションのように他人が使用していると立ち退きも容易ではないため、建物の評価額は自己利用のケースと比べて3割も評価が下がる。土地の評価についても、賃貸物件を建てると実勢価格の4割程度も低くなる。

 

アイ・インターナショナル株式会社管理部 矢吹靖浩部長
アイ・インターナショナル株式会社管理部 矢吹靖浩部長

評価額が下がれば、現金・預金で資産を保有しているケースと比べて大幅に相続税負担を抑えられるわけだ。そこで、冒頭で触れたように節税を目的とした不動産投資が活発化した次第である。

 

こうした節税を追求する不動産投資においては、もっぱら「圧縮率」の高さにフォーカスが当てられがちだ。「圧縮率」とは、物件の実勢価格よりも相続税評価額がどれだけ低くなるのかを示した数値である。

 

無論、「圧縮率」が高いほど、より大きな節税効果が得られることになる。もっとも、アイ・インターナショナル株式会社管理部の矢吹靖浩部長は次のように疑問を呈する。

 

「不動産を所有し続けていれば、いつか相続が発生しますから、最終的には『圧縮率』が関わってくるものです。しかしながら、不動産投資の本来の目的は資産形成であり、そのためには着実に収益を得られなければなりません。したがって、相応の収益が期待できる物件を選ぶことこそ、不動産投資の大前提なのです。収益性を疎かに捉えていると、節税は果たせたとしても、資産形成には結びつかない恐れがあります」

 

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利回りの低さが「空室発生」のダメージを増大

実際、節税目的の不動産投資で特に人気を博しているのは都心の新築マンションだが、中古や郊外の物件などと比べれば、当然ながら取得コストはかさんでしまう。つまり、収益性がかなり低いわけだ。

 

それでも都心は安定的に高い賃貸需要が見込まれ、新築の物件は入居希望者に選ばれやすいことから、利回りを度外視した投資が活発化している。実は、収益性の低い新築マンション投資には、思いがけない落とし穴が潜んでいる。

 

「空室が発生した場合、利回りが低い物件はそのダメージが大きくなるため、高い稼働率(入居率)を維持することが前提となってきます。言い換えれば、利回りが高い物件は多少の空室が発生しても十分に収益を得られるのに対し、利回りが低い物件は赤字に陥りやすいのです。しかも、人気を集めるのは築浅のうちに限られ、時間の経過とともに設定できる家賃の相場は急カーブで下がっていきます。そして、ある程度の年数が経つとそのカーブが緩やかになるというのが賃貸不動産の特性です」(矢吹氏)

 

むしろ、ある程度の築年数が経過した中古物件のほうが家賃は安定的だと言えるのだ。にもかかわらず、新築マンション投資に手を出す投資家が減らないのはなぜなのか?

 

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新築マンション投資は「過去の成功体験」にすぎず

振り返ってみれば、国が相続税の課税強化に踏み切る気配をいち早く察知し、先んじて新築マンションに投資していた人は大いに報われたと言えよう。2008年9月にリーマンショックが発生してから下落傾向にあった東京都の公示地価(住宅地)は、2013年で底打ちして顕著な上昇を遂げてきた。

 

上昇へと転じた初期段階に新築マンションに投資していれば、今よりもはるかに高い利回りが得られたのだ。しかし、その後は土地の取得コストが上昇するに従って、利回りが低下の一途を辿ってきた。

 

それでも依然として新築マンション投資が盛んなのは、先駆者たちが享受した「過去の成功体験」の残像が脳裏に焼きついているからかもしれない。また、先述したように利回りが低いと赤字に陥りやすいが、新築マンションのデベロッパーなどから「赤字を他の収入と損益通算すれば所得税を節税できる」と進言されるケースも見受けられる。

 

まさに言語道断で、本末転倒だと言える発想だろう。新築マンション投資では巨額のローンを組むケースが多く、赤字が続けばその返済にも影響を及ぼしかねない。

 

「結局、不動産投資において第一に考えるべきは収益性で、家賃がもたらすインカムゲイン(利回り)です。一時のタワーマンションのようにキャピタルゲイン(売却益)を得られるケースもありますが、あくまでそれは結果であって、まずは利回りに目を向けるべき。そのうえで最終的に相続税の節税にも結びつくのは、都心の中古一棟ものです。そういった物件なら、資産形成と節税を両立させた投資が可能となります」(矢吹氏)

 

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文/大西洋平 撮影/上條伸彦
※本インタビューは、2020年12月23日に収録したものです。

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