分譲マンションには出口がない残酷な現実
マンションは「天寿をまっとう」できない
人は裸で生まれてくる。そして、ひとりで黄泉の国へ旅立つ。
向こうの世界へは、何も持っていけない。これも平凡な真実である。
どれだけ気に入った住まいも、そこで暮らせるのは生きているあいだだけ。また、ある程度の健康を維持しているあいだだけである。
また、住んでいるところが持ち家でないと幸せになれない、ということはない。一生借家住まいでも、幸せに生きる人はいくらでもいる。
豪華なマンションに住まないと幸せになれない、ということはない。逆に、豪華なマンションに住んでも、それだけで幸せになることもない。
つまり、自分の住まいを所有する、ということは人生の義務でも使命でもない。
ところが、多くの人は自宅を所有することに執念を燃やす。
また、きちんとした仕事について収入を得られるようになると、自宅を購入しようとする。東京や大阪といった大都市に住んでいる場合、購入の対象となる住宅はまずマンションだ。
これはじつに不思議な現象だ。
私に言わせれば、今の日本で天寿をまっとうした分譲マンションはない。天寿をまっとうするとはすなわち、建物が老朽化して住めなくなったあと、区分所有者全員が取り壊しと跡地の売却に合意。売却をしたお金を専有面積割合で配分して、管理組合を解散する。それが私の考える「天寿のまっとう」である。
地震で取り壊さざるを得なくなったマンションについて、「天寿をまっとう」したとは思わない。それは明らかに事故死である。
残酷な現実だが、分譲マンションには出口がない。ほとんどのマンションは天寿をまっとうできない。そのことは、本連載を読み進まれることで理解できると思う。
多くの人は、この出口がどうなるかわからないものを、35年返済というとてつもない義務を背負って購入しているのだ。
そこまでしてマンションを買う必要はないと思う。
榊 淳司
住宅ジャーナリスト
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