こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

リモート教育を始めデジタル化は教育に役立つ

「なぜ、地方からなのか」と疑問を持たれるかもしれません。まずそれについて説明したいと思います。

 

オードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)
オードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)

たとえば、これまで台湾で行われていたリモート教育は、ネットにつながっているからこそ可能になっていました。そのため、ネット環境が整っていない山の上や離島では、これらの授業はできませんでした。

 

しかし、「それは公平ではない」と政府は考えました。そのため、昨年(2019年)から政府は山岳部をターゲットに設備投資を行っています。つまり、内政部(日本でいえば総務省)は、ヘリコプターを出動させるなど、あらゆる方法を使って、どれだけ高い山でも電波が届くようにしています。また、今年(2020年)中には離島や海上でも電波が届くようにする予定です。

 

台湾にはたくさんの小島があり、小学生がカヌーを使って島々をめぐるような体験をしています。小島の間を縫うように漕ぐのはカヌーの良い練習になります。ただ、何かのトラブルがあった場合、陸上にいる人が助けてくれるかどうかは別にして、ネット環境を整えておかなくてはなりません。文字どおり、それがセーフティーネットになるからです。

 

セーフティーネットが何もないと、子供たちが非常に危険な状況に置かれるケースがあるかもしれません。でも、セーフティーネットがあれば安心して探検できますし、大自然は彼らの良い先生になってくれるでしょう。

 

そのような体験は、人間の成長にとても貴重なものです。そういうものが何もなければ、私たちはいつも平地の人間が作り出した建築物の中にいるだけです。ネットにつながっているだけでは、大自然の中に入り込む感覚を実感することはできないでしょう。VR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)はあくまでも仮想に過ぎず、大自然と同じというわけではありません。

 

5Gあるいは将来的には衛星を利用した6Gが出てきますが、これらの技術は私たちが到達できる場所を拡大するだけでなく、私たちの視野を広げてくれます。また、これは教育の非常に重要な部分です。だから、まずネット環境が整っていない地方から始めているのです。それによって、私たちが手にできるものは、決して小さいものではありません。

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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