医療従事者がやっていた、自分の目を危険にさらす行為
少し話がそれますが、以前、筆者のクリニックの看護師Aさんから、アイメイクについて質問を受けたことがあります。Aさんは、キャリア20年以上になるベテラン看護師です。当クリニックの開院当初から勤務してくれており、私たち医師も頼りにしている職場のリーダー的な存在です。
彼女はもともと目元のはっきりした顔立ちでしたから、若い頃はアイメイクの必要性をあまり感じていなかったそうです。けれども、年齢とともに目元の印象がなんとなくぼやけて見えるようになり、悩んでインターネットでいろいろと調べていたら、「インライン」というメイク法に出会ったといいます。
インラインとは、まぶたに生えているまつげの生え際の、皮膚と粘膜の境目の部分にアイラインを引くことです。ここにアイラインを入れると目の際がクッキリと縁取られ、目元の印象を強くするということで、雑誌やネットのメイク記事でもこの方法がよく紹介されていたそうです。
しかし、Aさんは看護師という職業柄、「粘膜に近い部分にメイクを施すと、目に良くないのでは?」と不安を感じて、筆者に尋ねてきたというわけです。Aさんの直感は、さすがに的を射ています。インラインを引く部分にはマイボーム腺が並んでいます。
マイボーム腺とは、まつげの生え際にずらりと並んでいる皮脂腺です。マイボーム腺は、平均して上まぶたにはおよそ50本、下まぶたにはおよそ25本あるといわれ、ここから特殊な油分を分泌して目の水分(涙)が蒸発するのを防いでいます。
ところが、「インライン」のメイクでここにアイラインを引いてしまうと、この大事なマイボーム腺を塞いでしまうことになります。その結果、皮脂の分泌が少なくなり、目が乾きやすくなったり、充血しやすくなったりします。
もっと悪いケースでは、マイボーム腺の分泌管の中で油分が固まって詰まる、「マイボーム腺梗塞」を起こします。こうなると目のかゆみやドライアイ、ものもらい(麦粒腫)の原因にもなります。
Aさんの予想どおり、インラインは目にとっては大きな負担となりますので、眼科医としてはやはり避けていただきたいと思います。アイラインを引くときは、まつげの上側(下まぶたは下側)の皮膚に描くようにしてください。
Aさんにもそのことを伝えると「おしゃれ好き、メイク好きの女性のなかでは、美しくなるには多少の犠牲も必要という意見もありますが、感覚器官である目はやっぱり大切にしないといけませんね」との感想でした。皆さんも気を付けてください。
松原令
医療法人社団松原眼科クリニック理事長
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