株主歓喜も経済はダメージ…企業の「ROE重視経営」のジレンマ

バブル崩壊後の長期低迷期、グローバル・スタンダードなる言葉とともに「儲かったら配当」という株主重視型の会社が急増しました。しかし、そこには看過できない問題があります。ROE(自己資本利益率)を高めるためにレバレッジを効かせることがインセンティブとなり、経営を不安定にするだけでなく、給料を増やさずに配当を増やすことが景気への悪材料となる可能性もあり、これらが日本経済への不利益となりかねないからです。経済評論家・塚崎公義氏が解説します。

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普通、企業経営は「ROA」と「ROE」で評価するが…

企業の経営が順調か否かを評価する場合には、通常ROAとROEが用いられます。ちなみにROAとROEに関する初心者向けの解説を拙稿『勤務先の将来性も明らかに…経営指標「ROA・ROE」とは?』に記しましたので、経済初心者の方はこちらもあわせてご参照いただければ幸いです。

 

これらは企業規模に対する利益額の比率ですから、利益がライバルの2倍あっても、会社の規模が5倍だとすれば、ライバルの方が効率的に利益を稼いでいると評価されるわけです。

 

ROAを高めるのは重要なことです。総資産を効率的に利益に結びつけること、いいかえれば、株主や銀行から調達した資金を効率的に利益に結びつけることが必要だからです。

 

しかし、ROEを高めるには「ROAを高める」以外にも「レバレッジを効かせる」という手段があります。こちらは財務部長が銀行から借金をして株主に配当する(または自社株を買う)だけで簡単に実現できます。問題は、この後者のほうなのです。

レバレッジは株主の利益だが、日本経済の不利益に!?

株主にとっては、自分の出資した資金を企業が効率的に用いて利益を稼いでくれることが非常に重要ですから、ROEを重視するのは当然のことです。ROEが高まれば、株主が受け取れる配当が増えるかもしれないですし、ほかの投資家による株式購入により株価が上昇するかもしれないからです。

 

しかし、そのためにレバレッジを効かせよう(自己資本比率を下げよう)というのは好ましいことではありません。レバレッジが高まると倒産リスクが高まりますが、それは日本経済の利益ではないからです。

 

企業が倒産すると、まだ使える設備機械がスクラップ業者に二足三文で叩き売られたりしかねませんし、企業の持つノウハウや信用や顧客リストといった見えない資産が雲散霧消しかねません。これは日本経済にとって大きな損失です。

 

それだけではありません。企業が倒産すると、従業員が失業します。失業者を減らすことは最重要の経済政策課題ですから、失業者の増加は日本経済にとって大きな問題となるはずです。

 

しかも、失業した元従業員は給料がもらえないので消費をしなくなりますから、景気が悪くなります。悪くすると、景気の悪化は「消費者が買わない→企業は売れない→作らない→雇わない→消費者が給料がもらえず買えない」といった悪循環をもたらしかねません。

 

さらに悪くすると、企業に納入していた業者が連鎖倒産するかもしれず、あるいは企業の製品を使っていた人々も困るかもしれません。要するに、企業が株主重視経営としてレバレッジを効かせると、多くの人に迷惑をかけることになりかねないのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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