AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。ITやAIの技術革新の波は今後もとどまることはない。とはいえ、打つ手はあると公認会計士・税理士の藤田耕司氏は語る。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

自動化しにくい3つの仕事の特徴とは

この2人の見解以外にも、私はAI関連のビジネスを展開する人々への取材やAI関連書を読み込んでの情報収集を通じて、自動化されにくい仕事の特徴を分析してきました。これらをまとめると、「Think」「Humanity」「Body」の要素を伴う仕事は自動化されにくく、人間の仕事として残ると考えられます。以下、それぞれの要素について説明します。

 

藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)
藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)

Think(思考力・創造力)

 

過去のデータから規則性やルールなどを学習し、そこから類推して処理を行うAIの性質を踏まえれば、

 

「規則性やルールの学習が難しい複雑な判断を行う力」
「相手の目的を理解して応用的な提案をする力」
「その都度、機転を利かせた臨機応変な対応力」

 

などが求められる業務は自動化が難しいといえます。

 

また、「今後の方針やビジョンを示す」など、人により判断が異なる業務や、「新しく斬新な企画やアイディアを生み出す」「芸術的なセンスを発揮する」といったゼロから1を生み出す業務などもAIによる自動化は難しいでしょう。

 

Humanity(人間性)

 

「信頼関係を築く」
「共感や励ましにより安心感や癒しを与える」
「リーダーシップを発揮して人間関係を調整する」
「人を育てる、人のモチベーションを上げる」
「哲学や道徳など人の道を教える」
「人生の体験を語って感動や勇気を与える」

 

など、人間性が求められる仕事や人間の感情を扱う仕事をAIや機械が行うことは現状では考えにくく、人間ならではの仕事といえるでしょう。

 

Body(物理的実体・法的権利帰属主体)

 

AIは体を持つものではなく、人と全く同じ動きができるロボットはまだ開発されていません。そのため、物理的実体が求められる肉体を動かす仕事は、しばらくは人間の仕事として残るでしょう。

 

また、責任を伴う仕事や何らかの法的権利が発生する仕事においては、責任や法的権利の帰属主体が必要になります。当然、AIや機械は責任や権利の帰属主体になれないため、人間が関与することになります。

 

こういった観点から、次回では、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、弁理士、中小企業診断士のそれぞれの仕事で自動化される可能性や、逆に自動化されない可能性についてさらに考察したいと思います。

 

藤田 耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー

 

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

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