病院経営者の悩みは増える一方です。地域医療構想など医療行政の長期的変化、診療報酬改定、医療技術の高度化への対応、足元での収益力低下、厳しさを増す人材不足・採用難、経営者自身の高齢化、後継不在…。そんななか、これらを解決する有効手段として「病院M&A」が注目されています。ここでは病院M&Aを検討する際の必須知識として知っておきたい「医療法人の種類」を解説します。※本連載は、矢野好臣氏、余語光氏の共著『病院M&A』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

「持分あり医療法人」は新設不可になったが…

現在、持分あり医療法人は新設できず、経過措置型医療法人のみ以前は、医療法人のほとんどが持分あり医療法人でした。しかし、持分あり医療法人には、事業承継などに関してさまざまな問題が指摘されたため、2007年4月以降は、持分あり医療法人は新設できないとされ、新設医療法人は、持分なし医療法人に一本化されました。

 

では、それ以前に存在していた持分あり医療法人はどうなったかというと、持分なし医療法人に移行できることとされました。

 

しかし、2007年以前に設立された持分あり医療法人をすべて、いきなり持分なし医療法人に変更させることは非現実的であるため、持分あり医療法人は、経過措置として当面そのまま存続してもよいこととされました。そのため、現存する持分あり医療法人は、「経過措置型医療法人」と呼ばれています。あくまで経過措置としての暫定的な類型ということです。

 

しかし、持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行はあまり進んでおらず、現在でも社団医療法人のうち70%以上が持分あり医療法人だとされています。

医療施設にも区分が…違いは「病床の数」

以上は医療法人の分類ですが、一方、医療施設にも「病院」と「有床診療所」「無床診療所」との区分があります。病院とは20人以上の患者を入院させるための設備、つまり20床以上のベッドをもつ施設です。19床以下の入院設備がある施設は「有床診療所」、入院設備がない施設は「無床診療所」と呼ばれます。診療所はクリニックと呼ばれることもあります。

 

なお、施設の「病院」「診療所」区分と、経営主体の区分は、関係ありません。たとえば、個人経営の病院もあれば、医療法人が経営する診療所もあります。そして、医療法人経営か個人経営か、病院か診療所かによって、M&Aのスキームは変わってきます。

 

 

余語 光

名南M&A株式会社 事業戦略本部 医療支援部 部長

認定登録医業経営コンサルタント登録番号7795号/医療経営士

 

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余語 光

幻冬舎メディアコンサルティング

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