
2020年は、世界各国が「新型コロナウイルス」という未知のウイルスに恐怖して行動制限したことで、一気に経済が落ち込みました。新型コロナはまだ猛威を振るっていますが、ウイルスの正体が見えてきたこと、ワクチンの開発が進み、接種ができるようになったことから、人々の行動も、世界の経済も次第に変化していくものと思われます。2021年の景気動向を、人々の行動や心理から、経済評論家・塚崎公義氏が推察します。
新型コロナによって甚大な打撃を受けた世界経済
2020年の世界経済は、新型コロナによって甚大な打撃を受けました。欧米等では新型コロナが猛威を振るい、感染者数も死者数も非常に大きなものとなり、都市封鎖なども行われたため、経済活動に大きな制約が生じたからです。
日本では、欧米と比べて感染者数等が数十分の1でしたが、経済が受けた打撃は欧米並みの深刻なものとなりました。
日本の感染者数が少なかった理由と、それにもかかわらず経済への打撃が大きかった理由として、筆者の想像ですが、日本人が悲観的に物事をとらえて慎重に行動することが関係していると考えています。
日本人は未知のウイルスである新型コロナを恐れ、感染者数がそれほど多くないのもかかわらず、しっかり自粛をしました。だからこそ、感染者数の割に経済への打撃が大きかったわけです。しかし、そのおかげで(三密回避・手洗い・マスク着用をしっかり行ったことも寄与して)感染者数が少なくてすんだのだ、と考えるわけです。
日本人が自粛等に励んだ理由には、マスコミや評論家等が不安を煽ったことが挙げられるかもしれません。マスコミや評論家等は、悲観的なことをいって不安を煽るほうが、読者・視聴者の関心を引きやすいので、悲観的なコメントを流す傾向にありますが、それが人々の恐怖心を掻き立て自粛につながった、ということですね。
それに加えて「自粛警察」の存在も要因になったと思います。「新型コロナに感染する可能性はそこまで大きくないようなので、自分は旅行等に行きたいが、行ったことが周囲に知られたら批判されるだろう、そんなのは嫌だからやめておこう」と考えたのでしょう。
余談です。筆者は経済評論家の末席を汚していますが、いたずらに悲観的なことをいって人々の不安を煽ることを潔しと考えていません。筆者の話が関心を引かない一因は、そうしたところにもあると考えていますが、ならば仕方のないことですね(笑)。
「未知の恐怖」から「既知の脅威」へと変容中
人々が新型コロナに対して大きな恐怖を感じ、身を縮めて災厄が降りかかるのを防いだのは、未知の感染症だったからでしょう。予防法も治療法もわからず、それ以前にどのような感染症なのかもよくわからない状況では、仕方のないことです。
しかし、最近では治療法が少しずつ確立してきたようで、感染者数に対する死亡者数の割合は各国で大きく低下しています。ワクチンも次々と開発されているので、その効果にも期待がかかります。
そしてなにより、どのような感染症なのかが見えてきた、というのが重要です。致死率はそれほど高くなさそうだし、そもそも三密回避・マスク・手洗いといった基本的な動作をしっかり行っていれば、簡単には感染しないのだ、ということも少しずつわかって来ました。
未知の感染症への恐怖と既知の感染症への恐怖では、人々の行動に与える影響はまったく異なります。人々がいたずらに新型コロナを恐れていたステージから、正しく恐れるステージになれば、極端な自粛は行われなくなるでしょう。
