多くの病院が陥る「廃院への負のスパイラル」
1992年には、約57歳だった病院理事長の平均年齢は、2018年には約64歳となっています【図表】。
これは、社会全体の高齢化の進展と歩調をあわせているという面もありますし、また心身ともに元気な高齢者が増えているという理由もあるでしょう。その一方で、後継者が不在のため、現理事長が辞めるに辞められずに続けているという面もあるのではないかと考えられます。
医療業界は日進月歩しており、医療知識や医療技術は常に刷新されています。また、医療機器も最新のものが登場します。しかし高齢化している理事長が、医師として最新知識や技術を身につけ続けていくことは、相当の困難が伴うでしょう。本来であれば、そういった部分は若い医師に担ってもらいたいところです。しかし慢性期病床など比較的変化の少ない病院では、最新技術を臨床できる機会がなく、若くて技術向上へのやる気のある医師は、集まりにくくなっています。
先に述べたように、理事長の子も病院を承継しないとなれば、病院全体で高齢化が進んでいきます。理事長が「自分の代での廃院を考えなければならないかもしれない」と思うのなら、設備機器への投資も当然抑えるでしょう。
結局、医師の知識や技術あるいは設備機器が刷新されず、病院全体として古いままとなれば、それは中長期的に集患にも影響をおよぼします。すると収益が低下し、それにより投資や人材採用がますます難しくなり、それがさらに理事長の意欲を減退させるという負のスパイラルに落ち込みかねません。そうなったら、あとは廃院までまっしぐらではないでしょうか。
こういった事態が生じる主要因は、今までに見てきたような日本社会の医療を巡る構造的な問題です。そのために、理事長の能力や資質といったこととは別に、多くの病院でこのような負のスパイラルに陥る可能性はあるのです。
そうなる前に、あるいはそうなりかけていると感じられたときに、負のスパイラルを避け病院経営の課題を前向きに解決するための選択肢として、M&Aという方法があることをぜひ知っておいてください。
余語 光
名南M&A株式会社 事業戦略本部 医療支援部 部長
認定登録医業経営コンサルタント登録番号7795号/医療経営士
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