今、病院経営について悩みや不安を感じていない病院経営者の方は、ほとんどいないでしょう。地域医療構想など医療行政の長期的変化、診療報酬改定、医療技術の高度化への対応、足元での収益力低下、厳しさを増す人材不足・採用難、経営者自身の高齢化、そして、後継不在。これらの要素は、相互に関連しながら進展し日本の多くの病院経営を揺るがせています。病院経営者を悩ませているさまざまな問題を確認し、現状を分析。※本連載は、矢野好臣氏、余語光氏の共著『病院M&A』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

支払い拒否、虚偽の悪評を吹聴…クレーマー患者の出現

病院にとって「顧客」となる、患者が求めるものも変わってきています。以前であれば、必要最低限の医療や介護が確実に施されることが求められましたが、現在ではそれにプラスして、より満足を感じられる医療や介護を求めるニーズが増えているのです。

 

ところが、診療報酬は基本的に患者の満足度といった部分を評価する仕組みになっていないので、そこに患者の求めるものと提供されるサービスのギャップが生まれていました。

 

現在では医療の質を評価する報酬体系が採り入れられようとしてきていますが、今後もその傾向は、より進んでいくことでしょう。その傾向がさらに進んでいったとき、それに対応できる体制が取れるかどうかということも懸念されます。

 

理事長がそれを進めようとしても、ノウハウがなかなか蓄積できなかったり、これまでのやり方が変わることに対するスタッフの反発が生じる可能性も考えられます。

 

また、インフォームド・コンセントやセカンドオピニオンなど、患者の自己決定の意識が向上し、医療に対する知識や医師に対する要求も向上しています。それは基本的に良い部分が多いのですが、すぐに不機嫌になり怒る患者、医師の診療を受け入れない患者、あげくの果てには、医療費の支払いを拒否する患者など、いわゆるクレーマー的な患者も存在します。

 

さらに近年では、SNSで根拠がない病院の悪口を書いて拡散させるなどの行為も増えました。これは、実際に集患にある程度の影響を与えます。

 

そういったクレーマー的な患者への対応は、一歩間違えるとレピュテーションリスク(評判悪化)があり、病院スタッフへも多大な負担をかけるもので、対応には苦労させられます。

建て替えできず「廃院を選ばざるを得ない」ケース

2代、3代と続いてきた病院の場合、病院建物の老朽化の問題もあります。建物がかなり古い場合は、それ自体が集患に影響を及ぼすことから、改修よりも建て替えが選択されるでしょうが、収益性が低く内部留保が少ない医療法人では、その多額の費用も理事長の頭を悩ませます。

 

病院建て替えは単に建物を建て替えるだけではなく、その間の入院患者、外来患者への対応など考慮すべき事項がたくさんあります。建て替えに際して医療機器、設備も最新のものにするとなると、そこでもまた多額の資金が必要です。資金的に建て替えができないために、廃院を選ばざるを得ないケースも出てくるのです。

 

 

余語 光

名南M&A株式会社 事業戦略本部 医療支援部 部長

認定登録医業経営コンサルタント登録番号7795号/医療経営士

 

 

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医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院M&A

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余語 光

幻冬舎メディアコンサルティング

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