日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は編集部に届いたある家族の争いについて、山田典正税理士が解説します。

母から突然贈与の話…相談のない兄に、弟、激怒

父の四十九日法要。初七日法要のときのような湿っぽさはなく、参列者の中にはワイワイと和やかな雰囲気が流れていました。

 

滞りなく法要も終わり、参列者が食事をしていたときのこと。BさんとC子さんが母に呼ばれました。

 

C子さん「なに、お母さん?」

 

母「話しておきたいことがあって」

 

Bさん「あぁ、この前電話でちらっと言っていたこと?」

 

母「そうなの。実は贈与のことで」

 

Bさん・C子さん「贈与!? なんのことだよ、それ」

 

母「実は、あのあとAから『相続放棄したけど、やっぱり遺留分だけはほしい』って話があって」

 

Bさん「なんだよ、その遺留分って!?」

 

母「本来、相続するはずだった分のさらに半分は、相続を受ける権利があるんだって。でも一度3人とも相続放棄ってことで同意しているじゃない。だから私が相続した分から、遺留分を贈与というカタチで渡そうと思って。でもAだけに、というわけにはいかないじゃない。だからBやC子にも……」

 

Bさん「なんだよそれ、ちょっと待って、兄さんを呼んでくる」

 

Bさんはすごい剣幕でAさんを呼びに行きました。

 

Bさん「兄さん、なんだよコソコソと! 遺留分ってなんだよ」

 

Aさん「あっ……いろいろ調べたらな、『遺留分』ってやつで、仲の良い家族でもトラブルになることがあるって聞いたから。だから一度相続放棄したけど、きちんとしておいたほうがいいって、母さんに言ったんだ」

 

Bさん「だったら、コソコソ言わないで、俺らの前で言えばいいだろう!」

 

Aさん「いや、でも……」

 

Bさん「でもじゃない! あとから贈与受けたら、相続放棄した意味ないだろ。誰だよ『遺留分』なんて言ったやつは!」

 

Aさん「いや、あの……」

 

「いや」「その」しか繰り返さないAさんの態度に、Bさんの怒りは頂点に。思わずAさんに怒りの拳を振り下ろしてしまったといいます。騒ぎを聞いた参列者も集まってきて、一時騒然となったそうです。

 

しばらくたち、落ち着きを取り戻したBさん。母とCさん子さんが間に入り、ゆっくりとAさんから事情を聞きました。そして遺留分について進言してきたのはAさんの奥さんだったことが判明しました。

 

Aさん「ほら、これから子どもの教育費とか、色々とかかるだろう。うち、子ども4人もいるからさ、家計が大変なんだよ、きっと。それで相続は放棄するっていったら『遺留分くらいもらってこいっ!』とすごい怒られて……」

 

Bさん「はぁ!? それで相続放棄しておきながら母さんに言ったのか。どれだけ尻に敷かれているんだよ」

 

葬儀のときはテキパキと動いていた兄を見直したBさんとC子さんでしたが、やっぱり兄は頼りなかったとため息しかでませんでした。そのあと改めて家族で話し合い、贈与の話もなし、ということで決着したといいます。

 

黙っていて、すみません…(※画像はイメージです/PIXTA)
黙っていて、すみません…(※画像はイメージです/PIXTA)
次ページ解説:「遺言書の付言事項」で思いを伝える

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧