3については、
「被相続人と相続人との身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献は相続分自体において評価されているというべきであるところ,抗告人は被相続人の子であって,抗告人がした介護等には,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される部分も一定程度含まれていたとみるべきこと,抗告人は,被相続人所有の自宅に無償で居住し,その生活費は被相続人の預貯金で賄われていたこと,被相続人は,第三者による介護サービスも利用していたことからすれば,原審判が,第三者に介護を依頼した際に相当と認められる報酬額に裁量的割合として0.7を乗じて寄与分を算出したことが不当であるとはいえない。」
と判断しました。
上記のような介護報酬基準を踏まえた寄与分の算定方法は、今後も調停・審判実務で採用される例は増えていくものと思われます。
寄与分である「759万3530円」の算定方法
なお、本件では、遺産総額が6607万2398円であったのに対し、最終的に寄与分の算定は、以下の通り759万3530円と算定されました。
寄与分は、遺産総額の概ね10〜20%、というのが一つの目安といわれていますので、裁判所として上記目安も意識した上で金額を算定しているのでしょう。
「被相続人が要介護4の認定を受けていた期間における寄与分は,要介護4の介護報酬6670円に80日を乗じ,これに0.7を乗じた37万3520円になり,被相続人が要介護5の認定を受けていた期間における寄与分は,要介護5の介護報酬7500円に1176.5日を乗じ,これに0.7を乗じた617万6625円になる。
抗告人がした医療行為についての寄与分は,前記(4)ウで算出した149万0550円に裁量的割合である0.7を乗じると104万3385円になる。これらを合計すると,抗告人の寄与分は759万3530円と算定される。」
※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。
北村 亮典
こすぎ法律事務所弁護士
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