「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症父、叔父(じーじの弟)のお見舞い

往復6時間、頑張ったね

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

年明け早々、静岡県三島市に住む叔父(じーじの弟)が動脈乖離と脳梗塞を起こして入院しているとの連絡が入った。叔父はじーじに心配をかけまいと、「兄さん(じーじ)には知らせないでくれ」と言っているらしいが、じーじにとっては、生き残っているただ一人の弟である。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

昨年の夏、認知星人に変身したじーじが一方的に怒り「あ~たとは裁判所でお会いしましょう」と言い放ち、「もう、あいつとは縁を切る」と言ったこともあったが、このまま聞かなかったことにするわけにはいかない。

 

じーじに話をすると「あ! そうか、あいつはもう死ぬな」となんとも物騒な返事。てっきり動揺すると思っていた私は一瞬拍子抜けをしたが、叔父も90歳。これが最後になるかもしれないのでお見舞いに行かねば!と思ったものの、じーじの体力を考えると電車移動は難しい。

 

車で行くしかないのだが、先日、認知星人ダース・ベイダー版に変身し、走る車のドアを開けて降りようとした経歴の持ち主である。

 

何かの拍子にスイッチが入り認知星人に変身されたら、一人ではどうすることもできない。それに途中のトイレの問題もある。かなりオヤジ化が進んでいる私だが、さすがに男子トイレには入れない。そこで弟に同行を依頼し、叔父のお見舞いに行くことに。

 

お見舞いの当日、じーじは朝からやけに張り切っている。背広を出せだの、香典袋は用意したかとか……。いやいや、まだ死んでないからと思いつつ、リハビリパンツと移動用のシルバーカーを積み込んでいざ出発。3連休の初日だったが渋滞もなく、途中3回のトイレ休憩をはさみ、3時間で三島市に到着。

 

叔父には意識障害が見られるが、じーじを認識してくれた。「春になったら、また熱海に釣りに行こう」と約束をして病室をあとにしたじーじ。

 

帰りの車中では、雲一つない美しい富士山に親子三人で感動。一度も認知星人に変身することなく、往復6時間を頑張ったじーじなのであった。

 

だが、家に着いた途端「おい、香典は渡したか?」とじーじ。叔父さんはまだ亡くなってませんから~。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

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