「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症父は外面の良さを如何なく発揮

私のスーパーファインプレー

 

その日は、じーじに大好きなにごり酒を献上し、お正月休みの間に香典とご祝儀を持って、じーじが一人でMさんの息子さんの家にお邪魔することにして丸く収まった。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

だが当日を迎え、いざ出発しようとした途端に事件は起こった。

 

「2時間たったら迎えに行くからね」と言うと認知星人のスイッチON!

 

「なぜ、お前たちも一緒に祝宴に参加しないんだ! Mさんの息子さんの家には、会社関係の人たちが大勢集まるんだ、俺一人で参加するなんて、そんなみっともないことはできない」(祝宴が開かれると思っているのはじーじだけである)と、怒る怒る。

 

私が「じーじが一人でお邪魔する約束だったよ」と言った瞬間、その表情はみるみるうちにダース・ベイダー版にバージョンアップ。約束の時間の間に合わなくなるので、とにかく車に乗ってもらい、いざ出発。助手席のじーじは、スーハー、スーハーと不気味な鼻息を立てながら、「なんで、誰も行かないんだ」とお怒りモードはMAXに。

 

目的地まであと少しのところで、じーじがびっくり仰天の行動に出た!

 

「俺は今から一人で生きていく。誰の世話にもならん!一人で行く!」

 

と叫びながら、車のドアを開けようと、内側のドアノブに手をかけた。危険を察知した私は、それはそれは鋭い瞬発力を発揮し、ドアノブをロック。その瞬間「ドアノブをロックしやがったな……」と、じーじ。その横顔は世界征服を企む悪の軍曹のようだった。

 

マンションのエントランスに到着すると、さっさと一人で車から降りて入り口に向かうじーじ。しかし、オートロックのため中には入れず、ますます鬼のような形相に。

 

その後、入り口まで迎えに来てくれたMさんの息子さんの顔を見た途端「いや~今日はお招きいただきありがとうございます」と満面の笑顔。おまけに私に「2時間後に迎えに来てね」だって!あまりの外ヅラ良夫君にあきれてしまうのであった。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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