相続発生時、遺言や遺書の有効性についてトラブルが発生するケースが多発しています。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は、身寄りのない高齢者の死後、雇用主が遺産を相続したケースについて見ていきましょう。

 

他方,被相続人も,生活全般や財産管理を抗告人に任せ,任意後見受任者を抗告人とするなど抗告人を頼りにしていた。

 

(4)さらに,抗告人は,被相続人が死亡すると(抗告人70歳),被相続人の四十九日までの法要を執り行い,相続財産管理人選任の申立てをし,同管理人の業務に協力した。

 

(5)以上の検討を踏まえると,被相続人が4000万円以上もの相続財産を形成し,これを維持できたのは,抗告人によって,昭和47年からの約28年間,被相続人の稼働能力を超えた経済的援助(前記2)と,平成13年から被相続人死亡までの約16年間,緻密な財産管理が続けられた(同3)からとみるのが相当である。被相続人の相続財産の中には,抗告人による約44年間もの長年にわたる経済的援助等によって形成された部分が少なからず含まれているというべきである。このほか,抗告人は,上記の期間(抗告人26歳から70歳,被相続人42歳から86歳),生活面でも被相続人を献身的に支え,同人死亡後は,その法要等を執り行った。

 

このように,被相続人の相続財産の相応の部分が抗告人による経済的援助を原資としていることに加え,被相続人の死亡前後を通じての抗告人の貢献の期間,程度に照らすならば,抗告人は,親兄弟にも匹敵するほどに,被相続人を経済的に支えた上,同人の安定した生活と死後縁故に尽くしたということができる。したがって,抗告人は,被相続人の療養看護に努め,被相続人と特別の縁故があった者(民法958条の3第1項)に該当するというべきである。

 

そして,上記の抗告人自身と被相続人との縁故の期間(被相続人42歳から86歳)や程度のほか,相続財産の形成過程や金額など一件記録に顕れた一切の事情を考慮すれば,被相続人の相続財産から抗告人に分与すべき額について,2000万円とするのが相当である。」

 

※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所弁護士

 

 

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