相続税をめぐる環境の変化に伴い、相続税調査の状況も刻々と変化しています。本記事では、第一順位の相続人全員が放棄した事例と、相続人がいない場合に特別縁故者に財産分与があった事例について、国税OBの税理士が税務調査官の視点から詳細かつ具体的に解説します。※本記事は『税務調査官の視点からつかむ 相続税の実務と対策~誤りを未然に防ぐ税務判断と申告のポイント~』(第一法規)から抜粋・再編集したものです。

「特別縁故者」として、故人の土地を分与されたが…

被相続人Xは平成27年12月に亡くなりましたが、被相続人Xには相続人はいなかったことから、令和元年5月に特別縁故者Aに相続財産である甲土地を分与する家庭裁判所の審判がありました。

そこで、Aは被相続人Xの相続開始が平成27年であったことから、平成27年分の路線価で甲土地を評価し、平成27年の法令を適用して相続税の申告をしました。

なお、Aは平成27年2月に被相続人Xから500万円の現金贈与を受けていましたが、贈与税の申告をしていますので、相続税の申告には考慮していません。

 

【税務調査官の指摘事項】

 

分与された財産の価額(甲土地)は、分与時である令和元年の路線価で評価しなければならない。また、平成27年の現金贈与については、課税価格に加算して申告しなければならない。

 

【解説】

 

特別縁故者Aが相続財産の分与を受けた場合、遺贈により取得したものとみなされ、相続税法の適用は相続開始年分(平成27年分)の法令により相続税を計算することとなりますが、相続財産の評価は、その与えられた時におけるその財産の時価(相法4条)とされていますから、本事例の場合は令和元年分の路線価により甲土地を評価します。

 

また、課税価格の計算に当たっては、相続開始3年以内の贈与を加算します(相基通4─4)。この場合、Aが納付した贈与税は、相続開始の年の贈与となり、贈与税の課税価格に算入しない(相法21条の2第4項)こととなるため、財産の分与があったことを知った日から4か月以内に更正の請求(相法32条1項7号)をして納付した贈与税の還付を受けることとなります。

 

なお、基礎控除は法定相続人がいませんので、3,000万円のみで、税額加算(2割)(相法18条)があることにご注意ください。

 

★実務のアドバイス★

相続税法改正にご注意


仮に被相続人の相続開始が平成26年以前であれば、基礎控除・税率などが変わりますので注意してください。

 

※申告する場合は、申告書は相続開始年分の様式を、土地等の評価明細書、画地調整率表などは分与時の年分の様式を使用します。これらの各様式については、国税庁のホームページで入手できます。

 

国税OB・税理士 渡邉 定義
国税OB・税理士 黒坂 昭一
国税OB・税理士 村上 晴彦
国税OB・税理士 堀内 眞之


 

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