今回は12月10日に公表された『令和3年度税制改正大綱』を解説していきます。※税制改正大綱は税制改正の素案となるものであり、おおむねこの通りの改正がされることがほとんどですが、100%確実ではありません。

「大法人向け」の税務、何が変わるのか?

■法人課税(大法人向け)

 

①産業競争力の強化法に係る措置

令和3年に産業競争力強化法の改正が予定されており、それにより事業適応計画(仮称)という制度が創設される予定です。詳細については現時点では解りかねますが、大綱によると「新商品開発や新生産方式・販売方式の導入により新需要開拓や生産性向上に全社を挙げて取り組む企業が提出する」とのことです。

 

この計画を提出した青色申告法人が、計画を実施するために必要な一定のソフトウェア(DXを促進するものが対象になると思われます)を取得した場合には、そのソフトウェアの取得価額について30%特別償却か3%~5%の税額控除を選択適用できるようになります。

 

②大企業向け所得拡大促進税制の改正

従来の適用判定が一新され、新規雇用者給与等支給額により制度判定が行われることになります。「新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額を言うようです。こちらの給与等支給額が前年比で2%以上増加することが適用要件とされます。

 

具体的な計算については大綱からは読み取れないために、詳細は令和3年4月以降に明らかになると思われます。なお、適用時期は令和3年4月1日から令和5年3月31までの間に開始する事業年度となります。

 

※従前の所得拡大促進税制の取扱いについては経済産業省のHPを参照ください。

 

③繰越欠損金の控除上限の特定創設

こちらは大法人を対象とした改正項目で、大法人は従前では欠損金の控除が当年度所得金額の50%までしか認められていませんでした。上記①にて説明した産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受けた青色申告法人について、適用事業年度※1において特例対象欠損金※2がある場合には、累積投資残額※3の範囲内で、当年度所得金額の50%を超えて100%までの特例対象欠損金の控除が認められることになります。

 

※1「適用事業年度」とは、特例対象欠損金額が発生してからおおむね5年以内の期間を言います。詳細は割愛します。

 

※2 「特例対象欠損金額」とは、令和2年4月1日から令和3年4月1日までの期間内の日を含む事業年度(一定の特例あり)において生じた青色欠損金額を言います。

 

※3 「累積投資残額」とは、「事業適応計画に従って行った投資の額」-「既に本特例により当年度所得金額の50%を超えて損金算入した欠損金相当額」で計算します。

 

つまりは、コロナ禍で発生した欠損金額については、事業適応計画で行った投資額の範囲内で、50%超の欠損金利用を認めるというものです。

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