「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

「新しいトイレはいいなあ。もう、漏らさないぞ」

解決策はビールに限る

 

便器を交換する際に、じーじからは、今のものより便座の大きさが2倍で、便器本体から温風が出て、座ると同時に便所全体が暖かくなる暖房機能がついているものにしろ、という指令があった。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

じーじのご希望にかなう便器はあるわけもなく、通常の便器を設置したところ、その割には「新しいトイレはいいなあ。もう、漏らさないぞ」とご満悦。

 

ところが数日後、事件は起こった。

 

突然、「おい、LSDにするぞ」とわけのわからない発言をするじーじ。LSD?なんで麻薬?と思いつつ、

 

「LSDをどうするの」
「あ!間違えたLPGだ」
「LPガス?家はプロパンガスだよ」
「バカにするな、そのくらい知っているぞ。だからLSDにするんだよ。全部の電球と蛍光灯を!」

 

「あ~、LSDじゃなくてLEDね」と思っていると、「LED用のバイパス工事をするから安定器を買ってこい。いや、素人のお前にはわからないだろうから俺も一緒に買いに行く」と、やる気満々。

 

LEDなんかに変えなくてもいいよ! と思いつつも、そこはじーじの言うことを否定しないと決めているので、「電球だけLEDに交換しようか。バイパス工事は、ちょっと危ないかもね」と言った途端、認知星人のスイッチON!

 

以前扇風機引きちぎり事件の時に持っていた電気工事士の資格証を手に、「この家の管理者はわたくしです」と敬語を連発。このままだと、以前私たちを困らせた認知星人管理人バージョンになって「今すぐ退去しろ」と言われかねない。

 

……ピカッとひらめいた!

 

「管理人さん、安定器と工事費用で総額はどのくらいですか?」
「そうだな、100万円ぐらいかな」
「結構なお値段ですね。ところで、実は、管理さんが毎日飲んでいるビールは第3のビールで、本物のビールではないんですよ。LEDに交換する費用を本物のビール代にあてるのはどうでしょう。そうしたら、毎晩管理人さんの大好きなKIRINのラガービールが飲めますね」

 

こう言ったところ「なに!毎晩KIRINのラガービールが飲めるのか、じゃあLEDはやめだ」とうれしそう。あっさりと事件は解決したのであった。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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黒川 玲子

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