今やコンビニ店舗数より多いと揶揄されている歯科医院。サバイバルが激しい歯科医師はどのような人物なのか――。厚生労働省は2020年3月、歯科医師国家試験の大学別合格発表を行っている。歯科医師国家試験の合格率は65.6%、新卒の合格率は79.3%。平均合格率は、国立大が77.9%、公立大が82.4%、私立大が61.7%。合格率がもっとも高いのは、「東京歯科大学」96.4%で、慶應義塾との合併を発表して注目を浴びている。ジャーナリストの伊波達也氏が大学別ランキングについて解説する。

「歯科と医科の連携」が今後の大きな課題になる

歯科医師国家試験の合格率を見て、もうお気づきだと思うが、医師国家試験に比べて低い。

 

これは各教育現場でのカリキュラムや教育体制・設備などさまざまな要因が関係していることは確かだろうが、根本的には、国の歯科医療政策が原因だ。

 

一時期、歯科医院はコンビニよりも多いと揶揄されたように、過剰になった歯科医育成にブレーキをかけたのが、2006年に文部科学省と厚生労働省から出された『歯科医師養成数削減等に関する確認書』というものだ。

 

これにより各歯学部へ定員削減が要請され、歯科医師国家試験の合格基準が引き上げられたのだ。それとともに歯学部の人気にも翳りが見え始めた。

 

そもそも日本では、欧米に比べて歯科医師に対する認識が低すぎるとも思う。

 

以前、取材で訪れた山形県・酒田市の日吉歯科診療所理事長の熊谷崇さんは、その点について強く訴えた。そして、歯科医師の地位向上の重要性を唱えつつ、それに伴う歯科医療の充実を主張した。虫歯予防の意識を子どもの頃から芽生えさせ、高齢者になっても自分の歯で食べられる幸せを維持し、健康寿命を保つことの大切さを強く訴え続けていた。

 

熊谷さんの診療所では、歯科衛生士が歯科医師のように個別の診療室を持ち、そこで患者の口腔内のメンテナンスにあたっている。今後は歯科医師のみならず、歯科周辺のパラメディカルの育成も重要であることを熊谷さんは強調する。

 

そして、まさに、超高齢化社会の先頭を走る日本は、熊谷さんの理念を大切にして口の健康を守っていくべきなのだ。

 

近年、口腔環境と全身の病気の関連性も言われるようになって久しい。生活習慣病をはじめとする基礎疾患、心臓や血管疾患、認知症との関わりも言われる。寝たきりの原因になっているという「オーラルフレイル」という概念も盛んに言われるようになってきた。

 

そんな状況下にも関わらず、未だに歯科医療、口腔内医療の重要性に対するパブリックイメージはお寒い気がしてならない。

 

今こそ医療の根幹を支える歯科医料、口腔内医療は、各医療診療科を結ぶハブ的な医療として見直すべきだし、我々国民がその重要性を強く認識しておくことは重要だ。

 

そして各歯科大学・歯学部は、医療との連携をもっと強めるべきだろう。

 

29歯学部のうち、先述した日本歯科大学、日本大学松戸歯学部のように歯科単科大学でも、医療と連携して治療にあたる重要性がますます高まるはずだ。

 

その点では、医学部併設の大学はもちろん、医療とのコラボレーションが可能な大学が、将来の活路を見出しそうだ。

 

東京歯科大学と慶應義塾大学の合併は大きな意味を持つだろう。そもそも東京歯科大学市川総合病院は、東京歯科大学の名を掲げながらも、医療部門の医師は、慶應の関連病院として多くの精鋭医師が診療にあたっている優良病院だ。

 

このように「歯科と医科の連携」がますます今後の大きな課題となるだろう。

 

2020年歯科医師国家試験に合格した皆さんに大いに期待をかけ、まだまだコロナ禍は続きそうだが、来る2021年の歯科医師国家試験の結果にも注目しよう。

 

伊波達也

編集者・ライター

 

 

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