NHK朝ドラ『おちょやん』8年間の奉公で報酬はわずか15円

NHK連続小説『おちょやん』で杉咲花さん演じる主人公、浪花千栄子はどんな人物だったのか。幼いうちから奉公に出され、辛酸をなめながらも、絶望することなく忍耐の生活を送る。やがて彼女は銀幕のヒロインとなり、演劇界でも舞台のスポットライトを浴びる存在となる。この連載を読めば朝ドラ『おちょやん』が10倍楽しくなること間違いなし。本連載は青山誠著『浪花千栄子 昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優』(角川文庫)から一部抜粋し、再編集したものです。

【オンライン開催(LIVE配信)】8/7(土)13:00~開催
定期預金、国債に代わる新しい資産運用の手法
ジャルコの「J.LENDING」が「安心・安全」だという根拠
詳しくはこちら>>>

15円の退職金が8年間分の報酬だった

大阪の商家はどこも倹約に熱心で、使用人に与える衣食には極力お金を使わない。

 

しかし、彼女の主人はそれが度を越していた。そのため雇い人が長続きせず、みんな1〜2年で辞めてしまう。

 

8年も勤めているキクノは稀な存在。店のことを一番良く知るベテラン従業員である。年は若いが、頼りになる存在だ。そんな彼女に、この主人はいまだ1銭の給金も与えていなかった。

 

仕事を覚えるまでの修業期間はタダ働きというのは、この時代さほど珍しくはない。職人の弟子も多くがそうだった。が、これだけ長い間、無給でこき使うというのは異常だ。

 

キクノには、女中の仕事であれば普通以上にやれる自信がある。また、漢字の読み書きもできるようになった。人並みの扱いを受けてもいいはずだ。

 

待遇を理不尽と感じて怒るのは、自らの能力に対する自信の現れでもある。この主人のもとでは、いつまでたっても状況は改善されそうにない。

 

「そろそろ見切りをつけねば……」

 

そう考えていたタイミングで、音信不通だった父親が、突然、彼女の前に姿を現す。8年ぶりの親子の再会だった。

 

これまでの経緯から、まずは娘に詫びるべきだと思うのだが、

 

「そろそろ貯金もできとるんやろ?」

 

と、いきなりお金を無心してくる。薄情にくわえて恥知らず。いまどきの感覚ならば最低最悪の親だと思う。しかし、実の娘を売春宿に売り飛ばす親も少なくない。そこまでやらないだけでもマシな部類なのか?

 

子は親に逆らってはならない。どんな理不尽も受け入れる。そんな常識がまかり通る時代だった。

 

キクノもまたその常識に縛られている。貯金があれば、求められるままに差し出したかもしれない。幸か不幸か、無給の彼女は1銭のお金も持っていなかった。当てが外れた父親は、奉公を辞めて家に帰って来いと言う。そして、退職金を求めて店の主人と談判をはじめてしまった。

 

「8年間も無給でこき使って、1銭の金も出さないのは、ひどいやおまへんか?」
「使い物にならん子どもを預かって、一人前の仲居になれるよう教育してやったんや。飯食わせてもらっただけでも感謝せなあかんで」

 

薄情で金に汚いことでは、どちらも相当なもの。キクノを不幸のどん底に陥れていた張本人の2人である。この時の聞くに堪えない醜い舌戦もまた、生涯耳にこびりついて離れない、嫌な思い出になっている。

 

結局、最後は主人のほうが根負けして15円の退職金が支払われた。女学校出の事務員やタイピストの女性なら、月給の半分にも満たない額。それが彼女の8年間分の労働に仕払われた報酬だった。まだまだ、普通の人として扱われていない。それを思い知らされる。

 

キクノの退職金を懐に入れた父親は、彼女を連れて列車に乗った。大正12年(1923)4月に天王寺までの路線が開通し、この頃になると大阪市内から富田林まで直通列車が運行するようになっている。

 

故郷が近くなってくると、車窓に金剛山地の山並みが間近に迫って見える。懐かしい風景はまったく変わっていなかった……。

 

彼女の風体もまた、代り映えがしない。9歳の頃と同じで化粧っ気はなく、すり切れたボロ着に身を包んでいる。衣類などまとめた荷物は、小脇に持つ小さな風呂敷に余裕で収まっていた。

 

青山 誠
作家

 

【7-8月開催のセミナー】

※ 【7/29開催】社会貢献&安定収益「児童発達支援事業」の魅力

 

※ 【7/29開催】高賃料×空室ゼロが続く!防音マンション「ミュージション」の全貌

 

※ 【7/31開催】入居率99%を本気で実現する「堅実アパート経営」セミナー

 

※ 【7/31開催】安定収益&売却益も狙える「豪・ブリスベン不動産投資」

 

※ 【8/7開催】投資すべき国No.1「フィリピン」日本人向け永住ビザ最新情報

 

※ 【8/7開催】ジャルコのソーシャルレンディングが「安心・安全」の根拠

 

※ 【8/7開催】今世紀最大のチャンス「エジプト・新首都」不動産投資

 

※ 【8/8開催】実例にみる「高齢者・シニア向け賃貸住宅」成功のヒント

 

※ 【8/22開催】人生100年時代の「ゆとり暮らし」実現化計画

 

少人数制勉強会】30代・40代から始める不動産を活用した資産形成勉強会

 

医師限定】資産10億円を実現する「医師のための」投資コンサルティング

 

【対話型セミナー/複数日】会社員必見!副収入を得るために何をすべきか?

 

【40代会社員オススメ】新築ワンルームマンション投資相談会

作家

大阪芸術大学卒業。著書に『古関裕而 日本人を励まし続けた応援歌作曲の神様』『安藤百福とその妻仁子 インスタントラーメンを生んだ夫妻の物語』(ともにKADOKAWA)、『江戸三〇〇藩 城下町をゆく』(双葉新書)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)などがある。

著者紹介

連載昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優一代記

浪花千栄子 昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優

浪花千栄子 昭和日本を笑顔にしたナニワのおかあちゃん大女優

青山 誠

角川文庫

幼いうちから奉公に出され、辛酸をなめながらも、けして絶望することなく忍耐の生活をおくった少女“南口キクノ”。やがて彼女は銀幕のヒロインとなり、演劇界でも舞台のスポットライトを一身に浴びる存在となる。松竹新喜劇の…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧