1ドア冷凍冷蔵庫、縦型2ドア冷凍冷蔵庫、横型(サイドバイサイド)2ドア冷凍冷蔵庫などのスタイルを線描きして、主婦の好みを問うという簡単なものでした。結果は、意外にも縦型2ドアが圧倒的人気だったのです。
理由は2つありました。
①冷蔵と冷凍のドアが別々なので冷気の無駄がない
②縦型のほうが場所を取らない
②は日本の狭い住宅事情を表したものでしたが、①は全く予想外でした。主婦の意識は、冷凍食品の保存というよりは、1ドア冷凍冷蔵庫の内蔵型の冷凍室を使うには、先ず外側の大きなドアを開放し、開放したまま中の冷凍室のドアを開けなければならないため冷気(電気代)が無駄だということだったのです。
この調査によって、確信をもって2ドア冷凍冷蔵庫の発売に踏み切ったのでしたが、大ヒットして翌年他社も追随することになり我が国の本格的な冷凍冷蔵庫時代を拓くことになったのでした。これは、主婦の真のニーズを知るために、もう一歩踏み込んで主婦の潜在意識を調査した事例でした。
変化の兆しを掴み、変化を先取りするためには?
変化を読むことは、同時に変化を先取りすることの重要性を意味しています。そのためには、日頃幅広い視野を持ち、仮説を持つなど問題意識を明確にして変化の兆しを見逃さないための努力が必要です。更に、患者や顧客に変化をもたらす原因、つまり社会の変化に注目することが求められます。次にその一端を記します。
①衣、食、住の生活の変化を知る
②技術の進歩を知る…医療技術、生産技術、材料開発、ITの進歩etc.
③政治を知る…医療厚生政策、経済産業政策、税制etc.
④業界の会合に出席、情報交換を行うetc.
今、社会経済環境が激動する中で、多くの企業の栄枯盛衰が報じられていますが、このことは経営にとって時代の変化を読み、いち早く変化に対応することの重要性を、そして現実にそれを実現することの困難さを如実に物語っています。
然し、経営者の最大且つ重要な役割の一つがそこにあります。また、それが後継者や経営幹部教育の要点の一つでもあります。
【教訓】
時代の変化を見逃さないために
①日頃から問題意識を明確にしておく
②変化を知る第1は顧客の変化を読むこと
③広い視野を持ち、顧客に変化をもたらす社会的背景を知る
※本記事は、連載『生産性向上はこうする』を再構成したものです。
平石奎太
平石経営研究所代表
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