違法の可能性大…職場にはびこる「残業代の請求条件」
Q3.「飲食店でパートをしている。作業が長引いたときなど、たまに残業があるが、残業の時間が30分を超えないと、残業代が請求できないルールになっている。」
⇒30分以内であっても時間外労働、すなわち残業です。使用者にはその分の賃金を支払う義務があります。
残業代について、職場によってルールがあるかもしれません。たとえば「残業代は10分単位で請求する」「制服に着替えたり、制服から私服に着替えたりする時間や朝礼などは勤務時間に含まない(残業代は出ない)」「残業代の請求に上限がある」などです。
これらはそれぞれの職場で勝手に決めているもので、いずれも違法の疑いが強いものです。
残業代は、通常分単位で、働いた分だけ、さらに法定の労働時間を超えた部分については割増で(月60時間までは1.25倍以上1.5倍未満)支払いを受けることができます。
「実際の勤務時間」を記録して残業の証拠を保存
ただし、そもそも残業がつかない勤務形態(高度プロフェッショナル制度の対象となった場合等)もあります。
この事例のようなケースで残業代を請求するには、労働審判の申し立て、訴訟の提起、労働基準監督署から指導をしてもらうことなどが方法として考えられます。
そのためには事前に、実際の勤務時間を記録しておく必要があります。職場にタイムカードがあり、正確な勤務開始・終了時間が打刻されていれば、写真やコピーを取ることが考えられます。
職場にタイムカードがなければ、勤務時間をメモしておくだけでも証拠になります。また業務で送ったメールの時間や、職場の時計の写真なども証拠になります。
実際にどのような業務をしていたかについても、上司の指示の内容をメモしたり、送信メールをプリントアウトしたりして、証拠を準備しておくとよいでしょう。
<関連条文>
【労働基準法】第32条 労働時間
1 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
【労働基準法】第36条 時間外および休日の労働
1 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5までもしくは第40条の労働時間、または前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、または休日に労働させることができる。
【労働基準法】第37条 時間外、休日および深夜の割増賃金
1 使用者が、第33条、または前条第1項の規定により労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては、その時間、またはその日の労働については、通常の労働時間、または労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1ヵ月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
上谷 さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長
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