本記事は、『相続破産を防ぐ医師一家の生前対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

「計画書見せてください。」Fさんが持ってきたのは…

その計画がどんなものか私も知っておかなければと思い、Fさんに銀行側が持ってきた提案資料を見せてくださいというと、Fさんは戸棚の引き出しから一枚だけ紙を持ってきました。見ると、まるで素人がパソコンで10分ほどで作ったような、きわめて稚拙な設計図が書かれていました。私が「これだけですか? ほかにも計画書とか設計・建築費の試算表とかもらっていますよね」と聞くと、「もらっていない。これだけです」とのこと。

 

新たに物件を建ててそこで事業を始めるのに、提案資料が設計図一枚などあり得ません。しかも、その設計図もあり得ない内容になっていました。

 

Fさんの土地は広大で立地も悪くなく、使い道は他にもいろいろあるはずなのに、あえて福祉施設である理由が明確ではないし、何よりもその広い土地のど真ん中に建てようとしているのです。

 

建物はその種類によっては、周辺に建てられる建物を制限してしまうことがあります。たとえば、ごみ処理場を建ててしまったら、その周囲にはアパートやマンションは建てられないでしょう。周辺の環境との相性を考えて、何を建てるか決めなければなりません。

 

さらに、土地を担保にして融資をすると話をもちかけ、億単位の借金をさせようとしていたのです。その銀行マンは「早く契約しろ、早くハンコを押せ」と言わんばかりの勢いで、Fさんに迫ったと言います。Fさんが高齢で、認知力が弱いとでも思ったのかもしれません。強引に押し切れば契約させることができると踏んでいたのではないかと私は思います。

 

Fさんも地域や孫のためになるなら、施設を建てることはやぶさかではないのですが、ただ、あまりにも話の進め方が強引なので、不安になり私に話してくれたのでした。「これはどう考えても怪しい」と思い、Fさんにストップをかけて建築の話は白紙に戻したのですが、あのまま契約していたら危ないところでした。

 

最悪は借金が返せず、土地を丸ごと持って行かれていたかもしれません。決めつけるのは良くありませんが、まるでFさんの土地を乗っ取ろうとしているかのような悪質さを感じる事案でした。

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相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

井元 章二

幻冬舎メディアコンサルティング

医師一家の相続は、破産・病院消滅の危険と隣り合わせ 今すぐ準備を始めないと手遅れになる! 換金できない出資持分にかかる莫大な相続税 個人所有と医療法人所有が入り乱れる複雑な資産構成 医師の子と非医師の子への遺…

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