もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

儲けるために100%消化のケアプランを作成

問題なのは、意味もなく100%の消化ありきでケアプランを作成しているところです。つまり、入居者や家族からの希望があるとか、多職種職員同士の協議の中で、ぜひとも必要な支援であるという結論に至ったなどの根拠があれば、まったくかまわないということです。しかし、現実は……。

 

また、最近では、逆のケースも増えてきています。入居者のほうも知恵がついたようで、事業者に対し、自身の区分限度額を満額使用させないで、介護サービスをやらせる入居者が増えてきました。実態は、次のようになります。

 

本来であれば、自分の区分限度額の中でケアプランを作り、介護保険の自己負担をした上でサービスの提供を受けなければならないところを、管理費や生活サポート費といった共益費的な費用を負担しているという理屈で、介護保険を使わず介護サービスをするようにと事業者に求めている入居者が、散見されています。

 

食事介助や排泄介助は、立派な介護保険サービスになりますが、それにかかる時間などが訪問介護サービスで規定されている時間を要しないケースなどは、介護保険サービスでは対応せず、別途負担している生活サポートサービスで対応したほうがよいと事業者は考え、入居者に案内します。

 

事業者の考えは「朝食のために訪問介護で入居者一人に30分張り付くことは人員的コストを考えると利益にならない。そこで、介護保険ではなく生活サポート費という自費のサービスを新設し、一定の負担をしていただければ、介護保険サービスとは別に自費サービスにて対応します」というスキームです。

 

介護保険はやればやるほど、自己負担額が増えますが、自費サービスの多くは定額制を採用しているので、いくら頼んでも費用負担は一定です。ちなみに、月額2万円から5万円程度の負担が多いようです。であるなら、多くの介護支援を自費サービスで対応してくださいと言って、介護事業者に迫る入居者がけっこう多いのが現状です。

 

なお、このようなケースの多くは、経済的な事情でこれ以上の介護保険報酬の自己負担はできないので、足りないサービスは自費サービスで対応してほしいという入居者側からの要望に対し、事業者が消極的とはいえ承知しているケースが多いと思います。当然、このような運営では、老人ホームは赤字運営になってしまうことは言うまでもありません。

 

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

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