子どもを持つ人の再婚は注意が必要だ。というのは、入籍することによって再婚相手に相続権が発生し、もともと相続権を持つ子どもとの間でトラブルになる可能性があるからだ。レスラーさん(仮名)の相続も、再婚がトラブルにつながったケースの1つだ。レスラーさんは、60歳で小料理屋の女将さんと再婚。当初、再婚相手であるおかみさんは相続権を放棄していたが、レスラーさんの死後、自分が持つ相続権を主張し、子どもたちともめることになった。※毎年恒例、幻冬舎ゴールドオンラインの相続特集が開幕! 最新情報から大人気記事のピックアップまで、盛りだくさんでお届けします。

「大丈夫。息子にもそう言っておいてくれ」から急展開

ただし、相続は放棄することもできる。一般的には借金の相続を避けるために放棄する人が多いが、遺産分割のトラブルを避けるために放棄する人もいる。レスラーさんの場合は後者のケースに入る。再婚相手に相続の権利が発生することで、子どもたちともめてしまう可能性を未然に防ぐため、再婚相手に相続を放棄してもらったというわけだ。

 

「ちゃんとできたのかい? 一度、私が書類を見ようか?」私はそう提案した。レスラーさんとは節税の話などはよくしてきたが、相続について話した記憶はない。おそらく自分で調べたり、手続きをした弁護士に聞いたりしたのだろうと思ったが、不備があるかもしれない。「大丈夫だよ。息子にもそう言っておいてくれ」レスラーさんはそう言って電話を切った。

 

取り越し苦労だったか。私はそう考え、笑ってしまった。レスラーさんらしい根回しだと思ったからだ。レスラーさんは金にうるさい。コツコツと築いてきた財産を簡単に誰かに渡したりはしない。次男に譲ったとはいえ、会社も大事だ。そう考えて、相続放棄を思いついたのだろう。私は受話器をとり、次男に電話をかけた。再婚相手とは相続放棄の約束をしたらしい。そう伝えると、次男も安心したようだった。

 

レスラーさんが亡くなったのはそれから2年後のことだ。66歳だった。滅茶苦茶な人だったが、だからこそ、いなくなると寂しいものである。仕事上でもたくさんの人に信頼されていたようで、葬儀には多くの人が参列した。

 

それから間もなくして、私は相続の手続きを手伝った。とくに難しいことはない。再婚相手が相続を放棄しているため、土地、建物、現金を子ども2人で分ければよい。父と長男は不仲だったが、長男と次男は仲よしだ。取り分でもめることもなかった。

 

しかし、思ってもいないことが起きる。葬儀の数日後、次男が事務所に電話をかけてきた。

 

「先生、父の再婚相手は相続を放棄しているんですよね」

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炎上する相続

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髙野 眞弓

幻冬舎メディアコンサルティング

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