「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

初執刀は悔しい結果に終わった。

「まあ最初はこんなもんだよ」

「はい」

「今日のことを復習して、また次頑張れよ」

「ありがとうございます」

「じゃあ退室頼むよ」

 

そう言うと岡島先生は手術室を後にした。初執刀は悔しい結果に終わった。

 

悔しいと口にするのが恥ずかしいほど、何もできなかった。いつか僕も岡島先生のような手術ができるようになるのだろうか。今はできるようになるイメージが全く湧かない。

 

執刀している時、宙に浮いているようなふわふわした気持ちで全然頭が働かなかった。鉗子の操作も全然ダメだった。僕は絶望的な気持ちになった。

 

その一方で、手術の楽しさを感じることもできた。目的の血管を周りの組織から剥がしてきれいに出して切ったり、正しい層に入って胆嚢を肝臓から剥離していく作業はとても楽しかった。

 

課題も見つかった。これまで主にビデオで予習・復習をしてきたが、ビデオでは上手な手術が淡々と進んでいく。しかし、いざ執刀してみると、ビデオで観ると何気なく通り過ぎていることの1つ1つが僕にとって大きな壁となって立ちはだかった。

 

今までのビデオの見方では受動的な勉強になってしまい、手順などの勉強にはなっても執刀に活かせる勉強にはならない。鉗子の操作に関しても自宅の練習キットでやっていたが、なんとなく糸を結んだりしていただけで実際の手術を意識した練習はできていなかった。

 

僕は初執刀を通して、手術できるようになるまでの道のりが果てしないことに絶望感を感じながらも、手術の楽しさや課題も見つかり、もっと上手に手術ができるようになりたい、そのためにはこれからは執刀に向けて、より効率的に一直線に勉強しなければいけないと実感した。

 

本記事は連載『孤独な子ドクター』を再編集したものです。

 

月村 易人

 

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孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

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