「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

同僚の細山と宮岡。優秀な医者を前に僕は…。

僕にはこれといった特徴もなければ、信念もなかった。一人前の医者になるためには初期研修が必須であり、初期研修の2年間で専攻する科を決めなければいけないため、いろいろな科を満遍なくローテーションしている、というだけだった。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しいていえば、手先が器用で、ルートキープ(点滴の針を血管内に挿入し留置すること)、気管挿管、血管カテーテル留置、糸結びなど、研修医が取得すべき手技はそつなくこなすことができたが、これらはそれほど重要なことではない。いずれみんなができるようになることが少し早くできたというだけのことである。

 

勉強熱心ではないし、上級医に怒られることも多かった。細山のような行動力も、宮岡のような誠実さも持ち合わせていなかった。自信がないから動くのが怖い、意見するのが怖い、そういうおっかなびっくりな研修医だった。

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孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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