「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

中規模から大規模の病院にいる研修医の特徴。それは…

僕のように明確な意志がない学生は、研修先に中規模から大規模の病院を選ぶケースが多い。各診療科が満遍なく揃っていて、ある程度のクオリティの研修が期待できるからだ。

 

研修医が10人前後いれば、合わない人が数人いてもなんとかなる。そういった病院はいわば「ハズレ」の確率が低いのだ。逆に石山病院のような小さめの病院は診療科が少なく、満遍なく研修するのが難しい。

 

もちろん研修病院に指定されている以上、初期研修に最低限必要な経験はできる。しかし、病院にない診療科を学ぶことはできないため、まだ明確な目標がない者には不向きなのだ。

 

以上の理由から、僕の場合は初期研修先として大きめの病院を選ぶのがセオリーだった。実際に大きな病院を見学し、面接も受けた。癖がそれほど強くない僕は、面接での受けも良く、いくつかの病院から内定をもらっていた。

 

しかし、同期は仲間であると同時にライバルでもある。同期が多ければ多いほど、ライバルも多くなるし、上級医も競争を煽ってくる。

 

気が弱いと自覚していた僕は、そういった厳しい環境でやっていく自信がなかった。みんなで一緒に手を繋いでゴールテープを切ろう、みんな1位でいいじゃん、というタイプなのだ。

 

競争は理不尽さを生み、勝利は生まない。僕は学生時代に野球部に所属していたのだが、当時のレギュラー争いやそこから発展するいじめの残酷さを経験し、競争というものを嫌うようになった。

 

どこに行っても必ず競争はある。社会に出て集団生活を送る上で仕方のないことである。理解していたつもりだったが、石山病院の院長が病院説明会で言った一言に、僕は衝撃を受けた。

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