「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

「明確な意志」を持っている研修医は実は少数派

細山や宮岡のように、初期研修が始まる頃にはある程度将来の志望科が決まっている人は多い。志望科が定まっていれば、それを見据えた研修病院を選ぶことができる。

 

救急科を目指していた細山は、将来的には大病院に勤めることになるから地域の医療の現状を先に知っておきたいという理由で石山病院を選んだ。産婦人科志望の宮岡は、地域に寄り添った医療を学んで、将来的には産婦人科医兼家庭医としてお産に携わりたいという理由で石山病院を選んだ。

 

ただし、彼らのように医学生の頃から「明確な意志」を持っている研修医は実は少数派で、ほとんどの場合、外科系や内科系と大雑把に決めて、自分と相性の良さそうな研修病院を選ぶのが実状だ。

 

僕はご多分に漏れず、明確な意志を持たない学生だった。「僕が石山病院を選んだ理由は、学生の時に訪問診療を見学し、地域医療に興味を持ったからです」。一応これが石山病院を選んだ表向きの理由だ。

 

初期研修医は病院を選んだ理由を聞かれることが多いため、その際に言葉に詰まらないように準備しておいた答えである。

 

もちろん、これは大義名分だった。本当の理由は「先生方がみんな穏やかで優しそうで研修医同士もピリピリしておらず仲が良さそうだったから」である。

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孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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