「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

2ヶ月後、感謝したワケ。採血をしたらなんと…

2ヶ月後、細山は宮岡に感謝していた。あのカンファレンス後、例の患者さんの採血をしたところ、炎症反応が出ていることが判明した。さらに、レントゲン検査などを行った結果、肺炎を発症していることが分かった。肺炎に対して治療を行うと、呼吸状態が改善し、意識も戻った。

 

その後、徐々に衰弱していき最終的には亡くなったが、意識が回復したことで、遠方に住んでいて長年会えていなかった息子にも会え、いい最期を迎えることができたとのことだった。

 

宮岡は正しいことを言える人間だ。正しいだけではなく、患者さん想いである。だから他人の患者さんにあれだけ口出しができるし、仲の良い細山を相手に対立した意見をはっきり言える。まさにプロフェッショナルだ。

 

僕には真似できない。患者さんのことを想う優しさがあるからこそ正しい結論に至り、なおかつその結論に誠実でいられる人間だ。産婦人科医として、地域に安心感を与えていく姿が容易に想像できる。

 

一方、このエピソードには細山の人間としての懐の深さも見える。まず、細山はカンファレンスで間違ったことは言っていなかった。できるだけ苦痛を与えたくないという細山の考えも一理あった。

 

その証拠に上級医は誰も口を挟まなかった。宮岡が意見をした時、「主治医はおれだから」と突っぱねることもできた。宮岡に指摘されないまでも肺炎の可能性も頭にあったのだろう。だからこそ熱や呼吸音についてしっかり把握していたのだ。

 

にもかかわらず、宮岡の意見に耳を傾け、自分の非を認める形をとった。そして、最後に感謝の言葉を述べた。

 

これも僕には到底真似できない。細山と宮岡は医者としても人間としても、本当に尊敬できる自慢の同期だった。

 

本記事は連載『孤独な子ドクター』を再編集したものです。

 

月村 易人

 

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孤独な子ドクター

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月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

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