発達障害の子どもの数は年々増加していますが、その受け皿となる療育施設の数は増えていません。そこには、どんな問題があるのでしょうか。株式会社コペル・代表取締役の大坪信之氏が解説します。

 

では、民間の療育機関はどうでしょう。

 

民間の施設については、預かることがメインの「預かり型」が多く、療育を受けられる「教育型」の施設が少ないのが課題です。比率としては、預かることがメインの事業所が9割近いというのが現状です。

 

もちろん、「預かり型」のニーズがあるのも事実です。発達障害の子どもを育てているお母さんの苦労は計り知れません。子育ては、ただでさえ大変ですが、たとえば多動傾向のある子どもを一日中追いかけているお母さんは、心身ともに疲れ切っていることも多くあります。そういうお母さんに、ひとときでも休んでもらうためには、預かり型が果たす役割は大きいといえるでしょう。

 

しかし、子どもの将来を長い目で見たとき、社会の中で能力を発揮していくためには、幼児期に適切な療育を受けることが大切です。教育型の施設が足りず、しかるべき時期に適切な療育が受けられないというのは、その子の将来にわたる大きな損失なのです。

 

療育が受けられる施設の数が足りないのと同時に問題なのが、療育の質です。

 

自治体の療育センターの現場では、先生が自作の教材を使って、それぞれのやり方で療育を行っています。そのため、療育のノウハウが蓄積されにくいという現状があります。

療育施設を選ぶ際、注目すべきポイントは?

本来、子どもたちが常に目を輝かせて学習に取り組むためには、大量の教材が必要です。私が運営する幼児教室では2000個の教材を使っています。1か月に使う教材だけでも、コンテナボックス8個分にもなります。子どもたちを飽きさせない授業を続けていくには、実際にそれだけの量の教材が必要なのですが、これを先生たちがそれぞれ手作りするのには無理があるでしょう。

 

加えて、療育を行う部屋の広さも問題になります。広い教室に、さまざまな年齢の子どもたちが集まるようなところでは、発達障害の子どもは落ち着いて療育を受けることができません。広い部屋の中で、大きな子どもが暴れていたり、ほかの子どもが遊んでいたおもちゃがあちこちに転がっていたり。そのような状況で、ただでさえ注意が次々と移る発達障害の子どもが集中できるはずがありません。

 

もちろん、運動をメインで行う施設であれば広さが必要になりますが、療育のレッスンを行う教室であれば、個室が理想的です。現状では、個室がある教室は全国で500教室。30万人分です。これではまったく足りていません。

 

6歳までに療育を受けられれば、IQは27ポイント上がり、社会に出て活躍するために必要な力を獲得できるのに、日本の発達障害の子どもたちはそのチャンスを逃しているのです。

 

 

大坪 信之

株式会社コペル 代表取締役

 

 

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大坪 信之

幻冬舎メディアコンサルティング

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