「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

「先輩なんてどうでもいい」と思えるだろうか?

例えば、上の先生と一緒に患者さんの回診に行くといつもの調子で話せなかったり、カンファレンスで上の先生に向かって自分の意見を言えなかったりすることがよくあった。

 

しかし、ほかの先生を見ていると上級医の前でも自分の意見をしっかり言える先生が多い。今までは(みんな気持ちが強いな)とぼんやりと思っていた。

 

しかし、おそらくそれだけではない。確かに僕は気が弱いところはあるけれど、絶望的に気持ちが弱い性格ではない。

 

(僕は過度に上の先生に怯えているんだ)

 

性格の問題ではなく、気持ちの持ちようなのだと思う。僕が人の目を気にするのはたぶん、必死さが足りないからである。

 

必死じゃないから人の顔色を伺う余裕があるのだ。みんな僕よりも気持ちが強いのかもしれないが、そんなことよりも必死で患者さんや手術に向き合っているのだ。

 

(先輩なんてどうでもいいと思えるくらい必死でやらないと)

 

僕はおかわりしたご飯を頬張りながら、そう思った。

 

(さて、今日はこれから何をしよう。明日は胃癌の手術だから、その予習は外せない。今日の手術で糸結びがうまくできなかったから、糸結びの練習も欠かせないな)

 

僕は店を出ると、今日のトレーニングメニューをあれこれ考えながら家路についた。

 

本記事は連載『孤独な子ドクター』を再編集したものです。

 

月村 易人

 

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孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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