大学病院の教授の権威は失墜し、もはや野心溢れる若手医師が目指す存在ではなくなったという。健康診断や当直などのアルバイトで食いつなぐフリーター医師も出現した一方で、『ドクターX』で有名になった、専門的なスキルを売りにして腕一本で高額な報酬を得るフリーランス医師は、病院にとって不可欠となっています。100以上の病院を渡り歩いた現役麻酔科医が知られざる医療の現場、医師たちの本音を明かします。本連載は筒井冨美著『フリーランス女医は見た医師の稼ぎ方』(光文社新書)の一部を抜粋、再編集したものです。

聖路加、虎の門…薄給でも人気ブランド病院

薄給でも人気なブランド病院

 

医師に人気があり、給料が安くても医師確保に苦労しない病院の特徴は二つある。

 

一つはキャリア形成に有用な病院、要するに「今は薄給でも、将来の出世や高給につながる」病院である。かつて、「白い巨塔」時代の大学病院はそうであった。国立がんセンターは薄給で知られる国立病院だが、外科医にとっては「難しいがん手術をバリバリこなして腕をみがけるし、ネームバリューがあるので転職に有利、将来開業してもホームページで経歴アピールできる」人気病院である。

 

筒井冨美著『フリーランス女医は見た医師の稼ぎ方』(光文社新書)
筒井冨美著『フリーランス女医は見た医師の稼ぎ方』(光文社新書)

一方で麻酔科医にとっては「長時間で単調ながん手術の麻酔ばかりやらされて勉強にならず、上から目線の外科医の相手も疲れるし、フリーランスに転職してもセールスポイントにはならない」不人気病院であり、ホームページでの「麻酔科医師募集」が常態化している。

 

もう一つは「人気病院なので、さらに人気が出る」病院である。人気のタワーマンションは価格が上昇し、「さらに値が上がりそう」なので、次々と買い手が現れる……という不動産バブルのようなものである。

 

「聖路加国際病院」「虎の門病院」のような東京駅や銀座へタクシー基本料金で行けるような都心有名病院は一種のブランド化しており、実際の研修内容はさておき、研修医の人気ランキングは常にトップ10入りしている。このような超人気病院ならば、各科に多世代の先輩が在籍しており「3年後、5年後、10年後」のキャリアパスを描きやすいし、「医師大量辞職、そして医療崩壊」のような事件も起きにくい。

 

病院が診療以外に教育・研究にも手を広げるには、とにかく人手が必要なのだ。人気病院には後輩もどんどん入ってくるので、雑用を後輩に廻して自分は留学やら好きな研究に打ち込むこともできる。あるいは、後輩がたくさんいれば、産育休も取りやすく当直残業免除でも肩身の狭い思いをしなくても済む。アルバイトもしやすい。

 

逆に、不人気病院では人手不足が常態化しているので、教育・研究もおざなり、有給休暇や産育休は取りづらく、アルバイト困難…という負のスパイラルが発生、そして医師大量辞職や医局崩壊のリスクは高い。

 

筒井冨美
フリーランス医師

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フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方

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筒井 冨美

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