決算書の一つ、「損益計算書(P/L)」。項目が多く一見難解そうだが、実はB/SやC/Sに比べて理解しやすい人が多い。これを読めば、企業の経営成績や利益を得るためにどのような努力をしたかがわかる。中には企業ごとの特徴が大きく現れる項目や、企業の実力がわかる項目も…。「日本人全員が財務諸表を読める世界を創る」ことを目標にする筆者が、明快に解説。※本連載は、大手町のランダムウォーカー氏の著書『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

P/Lの「利益」は5つ

もう1点だけ押さえておきたいことがあります。実際の損益計算書上では、利益という単語が沢山出てきますが、それぞれ意味が異なるため、ここからは「各利益の意味」を順に追いながら、P/Lの全体像を把握していきましょう。

 

損益計算書には複数の利益が表示されています(図表8)。それぞれが何を意味しているか表示されている順番に見ていきましょう。

 

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[図表8]利益の種類 (C)OTE_WALK 2020

 

まずは、1つ目の利益「売上総利益」からです。

 

【5つの利益①】売上総利益

 

売上総利益は、売上高から原価を差し引いて算出されます。これは、粗利益や粗利と言うこともあるのですが、「その表現なら聞いたことがある!」という方も多いのではないでしょうか。

 

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[図表9]5つの利益① 売上総利益とは (C)OTE_WALK 2020

 

【5つの利益②】営業利益

 

次に、営業利益を見ていきましょう(図表10)。一般的によくいわれる「利益」という言葉は、この営業利益を指している場合が多いです。

 

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[図表10]5つの利益② 営業利益とは (C)OTE_WALK 2020

 

営業利益は、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。

 

先ほどの売上総利益のみでは、本業(*)そのものが儲かっているのかどうかが完全にはわかりません。なぜなら、商品の原価以外に、販売・管理活動でも一定額の費用が発生しているからです。そのため、この費用を含めて利益を計算することで、本業の本当の儲けである営業利益を計算できます。

 

販管費は売上総利益を獲得するために、どれだけ企業が努力したのかを表示する項目です。販管費には広告宣伝に使用した費用や、従業員の給料が含まれるため、会社の経営スタンスが垣間見える科目でもあります。

 

(*)「本業」とは

企業は、自社のルールブックにあたる「定款」を作成します。この定款の中には、企業がどのようなビジネスをするのかについて記載をする場所があり、ここに記載されたものが「本業」となります。

 

たとえば、リンゴを仕入れて売っているような企業であれば、定款には「リンゴの仕入販売」と記載していることでしょう。この場合、リンゴの仕入販売は本業なので売上に計上され、それ以外のビジネスから得た収益は本業以外の収益のため営業外収益に記載されます。

 

販管費は様々な種類があるので、少しまとめてみましょう。

 

<販管費とは>

商品を販売するために発生する費用(=販売費)と、会社全体の管理にかかる費用(一般管理費)の総称です。これらは全て、商品を製造するために直接かかった費用ではありませんが、広告がないと売れませんし、本社の事務をやらないと会社そのものが回らなくなるということもあるので、これらの費用は商品を売るために間接的に発生する費用であると考えられます。

 

<販管費の例(主なもの)>

①給料…従業員の給料

②広告宣伝費…商品のCMの費用や、ネット上の広告を出すのにかかる費用

③運送費…商品を顧客のもとまで運ぶのにかかる費用

④地代家賃…オフィスを借りた場合の家賃

⑤減価償却費…固定資産を使用することによる資産価値の低下を費用化するもの

⑥外注費…業務を社外の人に委託した際の料金

 

販管費の中身を見てみると、同じ業種の企業でも広告宣伝費を多くかけている企業もあったり、逆に全くかけていない企業もあったりと、企業ごとの特徴がかなり出るのが、この販管費です。企業を分析する際は、販管費の中身を詳しく見てみると、いろいろな発見があるかもしれません。

 

【5つの利益③】経常利益

 

3つ目は経常利益です。「会社の実力が一番反映される利益」ともいわれています。経常利益は、本業で獲得した営業利益に、本業以外で獲得した収益(営業外収益)を加算し、費用(営業外費用)を控除して算出されます。

 

たとえば、本業以外で株取引を継続的に行っている会社の場合、株取引により利益を生めば、それは会社の利益に貢献しますが、本業で儲けているわけではありません。

 

こういったものがこの営業外収益や費用に計上されます。これらは全て、継続的に行われる活動により獲得した利益なので、会社の実力が一番反映される利益といわれます。

 

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[図表11]5つの利益③ 経常利益とは (C)OTE_WALK 2020

 

【5つの利益④・⑤】税引前当期純利益・当期純利益

 

4つ目は税引前当期純利益を見ていきましょう。税引前当期純利益は、特定の期間に発生した全ての事象を加味して算出された利益です。経常利益に、特別損益といった毎期のように発生しない事象(たとえば、火災損失や事業の売却)から発生した利益や損失を加算して算出されます。

 

また、この税引前当期純利益から、法人税等の税金コストを控除することで、5つ目の「当期純利益」が算定されます。

 

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[図表12]5つの利益④ 税引前当期純利益とは (C)OTE_WALK 2020

 

売上高から、各種の発生した費用を引いていき、最後に当期純利益が残るというイメージです。

 

また、各段階で商品の利益(売上総利益)、本業の利益(営業利益)、本業の利益に本業以外の収益や費用を加味した利益(経常利益)、当期に起きた特別な事象も含めた全体の利益(税引前当期純利益)、税金支払い後に純資産に返っていく利益(当期純利益)が見えてくるのです。
 

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[図表13]P/Lの各種利益まとめ (C)OTE_WALK 2020

 

 

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次ページ「P/L」を総括。もう一度クイズを見てみると…?
会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方

会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方

著:大手町のランダムウォーカー

イラスト:わかる

KADOKAWA

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