
インフレに強い資産である株。分散投資の選択肢としてお勧めですが、「損するから怖い」と考えて二の足を踏む人は少なくありません。しかし、株の長期投資の場合、その期待値はプラス(得することが多い)であり、多くの場合には、預金として持っているよりずっとメリットが大きいのです。なぜそういい切れるのか、元バンカーの経済評論家・塚崎公義氏が解説します。
長期投資とは、会社のミニ・オーナー社長になること
筆者は「預金はインフレに弱いリスク資産なので、インフレに強い株にも分散投資しよう」という考えを持っています。しかし、「株は損することがあるから怖い」という人が多いのです。
そうした人に少しでも怖さを和らげてもらおうと思い、本稿を記しました。「株式の長期投資は期待値がプラスです。つまり、損することもあるけれども儲かることのほうが多いわけです。怖がらずに勇気を出して投資してみましょう」というわけですね。
株式投資には、長期投資と短期投資があります。長期投資というのは、株を買ってずっと持っていて、配当や値上がり益を期待する投資のことです。
短期投資というのは、今日買って明日売って値上がり益を得ることを期待する投資のことです。これについは別の機会に考えるとして、本稿では長期投資について考えましょう。
株式会社を設立したときに全額出資して株主になり、そのまま株を持ち続けている場合には、文字通りのオーナー社長であり、会社の財産は自分の財産ですね。
しかし、オーナー社長が会社の発行済み株式の一部を売却したとします。売却された株式が上場されたとすると、だれでもその株を買うことができます。
たとえば、私が1株買ってずっと持っているとすると、私はオーナー社長と同じ立場に立つのです。会社が儲かれば私の財産が増え、会社が損すれば私の財産が減る、というわけですね。違いは持っている株数だけです(笑)。
まあ、社長の選挙のときには株券を半分以上持っている人の意見が通るわけですが、私は社長を選びたいわけではないので、その点は気にしないことにしましょう。
会社の利益の期待値が「プラス」になるワケ
オーナー社長は、基本的に慎重ですから、儲かるか損するか五分五分の案件には手を出しません。期待値がゼロの案件は見送り、プラスの案件だけに投資するはずです。そうであれば、会社の利益の期待値はプラスになるはずです。
ところで、なぜ期待値プラスの案件が転がっているのでしょうか? それは、ほかの経営者も臆病だからです。経営者たちはリスクを嫌うので、「こんなに期待値が高いなら、リスクをとっても投資してみよう」と思える案件にしか投資をしないのです。
「期待値が大幅なプラスでないと手を出さない」という経営者ばかりの世の中であれば、期待値が小幅プラスの案件はだれも手を出さずに転がっているので、経営者のなかでは臆病度合いが低い経営者がそうした案件を拾うことができる、というわけですね。
