「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

軍の機密情報とペニシリンの製造方法

股間に「ピッ」とインプット

 

丁寧に畳んで家中に置いてあるトイレットペーパーは、じーじにとっては磁気カードだったらしい。そんなことはつゆ知らず、私が捨ててしまったことから事件は勃発したのであった。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

「なに! 捨てただと、お前はなんてことをしてくれたんだ。いいか、あれは、軍の機密情報と、ペニシリンの製造方法がインプットされているんだ。これは大変なことになった。あの情報が漏洩したら、わが国は大変なことになる」とうろたえるじーじ。

 

どうやら、私がゴミだと思って捨てたトイレットペーパーは、認知星人に変身中のじーじにとっては、機密情報が満載の大切な磁気カードらしい。

 

このまま放置しておくと混乱してますます大変なことになるので、ゴミ箱から拾って「無事に見つかったよ!」と渡したところ、「お~。これで、情報は流出しなくなったからわが国の平和は保たれる。よかったよ」と満面の笑み。

 

しかし、気になるのは、その情報をどうやってインプットしたかだ! なぜかというと、そのへんに放置してある磁気カードという名のトイレットペーパーは湿っていることが多いので、たぶん、トイレで用(小)を足したあとの使用済みと思われるからだ。

 

「よかったね、でも情報ってどうやってインプットするの?」
「それもな、機密情報だから、お前にも教えるわけにはいかないんだが、ヒントぐらいなら教えてやろう」

 

と、自慢げな表情で、右手に持った磁気カードという名のトイレットペーパーを股間に押し当てて「ピッ! こうやって情報をインプットするんだが、これ以上は教えられんぞ」。

 

あっちゃ~、予感的中。じーじにとっての磁気カードは、やっぱり使用済みのトイレットペーパーだった! じーじのベッド周辺で漂うほのかな尿臭はこれだったのだ。

 

このまま家中に放置されても困るので、蓋が付いた容器を渡し「スパイに盗まれると困るから、この箱に入れてね」と言うと、大事にしまうじーじ。まあ、これで臭いだけはどうにかなるだろう。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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黒川 玲子

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