(c) Steve Lazarides 2019

正体不明の画家・バンクシー。サザビーズオークションで自らの作品『風船と少女』が1億5000万円と高額落札された瞬間、「意図的に」本作を裁断したシュレッダー事件(2018年)で注目を集めたほか、今年の夏にはネズミを地下鉄に描く動画が大きく報道されるなど、何かと世間を騒がせている。書籍『BANKSY CAPUTURED』(KKベストセラーズ)では、謎に包まれたアーティストがその姿を初めて公開した。バンクシー研究家の第一人者、東京藝術大学大学院教授の毛利嘉孝教授が解説する。

バンクシーを写したのは「過去に訣別した右腕」だった

⬛︎バンクシーの姿を初めて捉えた

 

――書籍『BANKSY CAPUTURED』は、バンクシーの姿が初めて捉えられたことも話題となり、英国では発売と同時に売切れ。その後、セカンド・バージョンも発刊され、ネットでは高値で取引きされています。今回アジアでもその世界限定部数で書籍が発売されました。先生は、どんな風に作品集を見ましたか?

 

(毛利)スティーヴ・ラザリデスが写真を撮影し、監修してまとめられた本であることに目を引かれました。彼は、2000年代にバンクシーと活動を共にした人物で、マネージャーでもあり、またフォトグラファーでもあった人物。初期のバンクシーのプロデューサー的存在で、スポークスマンでもありました。2003年には一緒に、バンクシーを初めとするストリート・アーティストのシルク・スクリーンを中心に制作・販売する会社POW(Pictures On Walls)を設立しています。

 

※シルク・スクリーン…印刷方法の一種。

 

「グラフィティ」(主にスプレーやペンキを用いた表現方法)は、お金にならない、儲からないと皆が思っていた時代です。シルク・スクリーンのプリントを作って売ること自体がチャレンジでした。当時確か、300〜500ポンド(日本円で4〜6万円)くらいだったと記憶しています。

 

コンセプトは、グラフィティが好きなティーンエイジャーや、大学生ら若い人が買えるアート。現代美術のプライスから考えると、かなり安い値段設定です。ラザリデスは、それまでとは違うマーケットを探していたんじゃないでしょうか。

 

ラザリデスは、グラフィティのマーケットがなかった時代にプリントを売ったり、ギャラリーのみならず倉庫やレストラン、バーといったオルタナティヴ・スペースで独自の展覧会を開いたり……。さらにはハリウッドにストリート・アートを売り込み、グラフィティの世界をアート・マーケットの世界に組み入れ先駆的な存在ですね。

 

※オルタナティヴ・スペース…美術館、劇場など正式な場所以外の表現空間を指す。

 

2人は、2008年に訣別したと言われていますが、ラザリデスはバンクシーが一番親しく、いわば右腕だった人物なのです。

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    監修:Steve Lazarides
    連載解説:毛利嘉孝

    KKベストセラーズ

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