ウォールアートが飾られているフェースブック本社
組織にアートを採り入れる企業
アートとビジネスの関連性が知られるようになり、日本企業の中にも、組織にアートを採り入れようとする動きが出てきています。
化粧品会社のポーラは、2016年から、新入社員向け研修で名画鑑賞を行うようになり、全日本空輸でも社員を対象に行ってきたグローバル教養力を習得するためのセミナーに2017年度から、西洋美術の鑑賞法を加えています。
海外では、フェイスブックの本社がウォールアートで埋め尽くされ、世界各国のオフィスにアートが飾られていることは、あまりに有名です。そのことについてフェイスブックは、「プロダクトやコミュニティは常に成長している=完成されておらず、発展途上であるのと同じように、オフィスも制作過程にあるアート作品のように感じられるべきだ」という同社CEOマーク・ザッカーバーグの思いが込められている、と説明しています。実際にザッカーバーグのコレクションは、アーティストによって表現方法は様々ですが、どれも創造力が掻き立てられるものばかりです。
マイクロソフトも企業コレクションを持ち、社内に絵画を展示することが生産力向上につながると公表しています。
また日本でもマネックスグループが、10年以上前から「Art in the office(アート・イン・ザ・オフィス)」と名付けて、公募で選ばれたアーティストの作品を1年間展示するプログラムを続けています。
私が以前勤めていたベネッセでも、直島でのアートプロジェクト以外にも岡山本社や東京本部に多くの現代アートを展示していて、普段から社員が現代アートに接することができる環境をつくっていました。展示替えをしてオフィスのイメージを大胆に変化させていたのです。1回に100点を超える美術館のような展示替えをして、社員に驚かれたこともあります。担当していた私本人が言うのですから間違いありません。これらはあくまで社員教育の一環ですが、今後は企業のトップにもアート的発想が求められる時代がくるでしょう。
経営理念の刷新や新たなビジョンの策定の場面も想定されます。そうした部分にこそアート的な発想によるパラダイムシフトが必要となるからです。
単なる「改善」ではなく、既存のものとはまったく異なる発想を行うときに求められるのが、ゼロからなにかを生み出すアーティストの思考法なのです。
アーティストの思考法というとハードルが高いように感じるかもしれませんが、日常でアートに触れる機会を増やしていくだけでも身についてくるものです。
秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授
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