日本では、2000年以降、タワーマンションが乱立する状態になっている。空き家が急増する中、これ以上、大量に住宅を供給する必要はあるのか?またマンションには欠かせない大規模修繕も、タワマンは多額の費用がかかり、破綻の兆しを見せている。いま、タワマンは「限界」にきていると、住宅ジャーナリストは指摘する。本連載は榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)より一部を抜粋、編集した原稿です。

なぜタワーマンションで育つと成績が伸びにくいのか

タワマン育ちの子どもは「高所平気症」になる

 

高いところから落ちると、人は死ぬ。

 

榊淳司著『限界タワーマンション』(集英社新書)
榊淳司著『限界タワーマンション』(集英社新書)

これは当たり前の真実である。誰もが知っている、というか感覚として身に付けている。しかし、そうした感覚はもはや常識ではなくなりつつあるのかもしれない。

 

前述したように日本人が本格的に3階以上の階層があるマンションに住み始めたのは、概ね1960年代以降である。その頃から、高層階から子どもが転落する事故が多発した。当たり前である。高いところに住む人が多くなれば、誤って落ちる人も出てくるだろう。

 

しかし、子どもの事故が多すぎることに気付いた人もいた。

 

一群の専門家たちが、そのことを具体的に調べた。

 

財団法人未来工学研究所は1971年に設立された文科省(現・内閣府)所管の研究機関である。彼らが1985年2月に行った調査によれば、高層集合住宅の小学生342人に対して行ったアンケートにおいて、4階以上に住む子の7割以上が「ベランダや窓から下を見ても怖くない」と回答したという。同研究所の資料情報室長(当時)であった佐久川日菜子氏が、こういう子どもの感覚を「高所平気症」と名付けた。

 

高所平気症は4歳頃までに高層階で育った子どもに多く見られるという。

 

「タワマンの子どもは成績が伸びにくい」

 

タワーマンション高層階に育つ子どもは成績が伸びないと話す教育の専門家もいる。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康氏だ。

 

彼は中学受験指導とプロ家庭教師の経験が40年以上。かつては都内の高級住宅地の家庭を訪れることが多かったが、ここ数年増えているのが都心のタワーマンションの上層階。

 

はじめは、西村氏も「たまたま」だと思っていたそうだ。それが次第に「あれ? なぜだろう」と思うようになったという。そして今は、「タワーマンションの上層階に暮らす子どもは、成績が伸びにくい」と、ほぼ確信するに至ったようだ。

 

タワーマンションの上層階に住むにはそれなりのコストがかかる。タワマンの購入者にはニューカマーの成功者が多い。彼らは優秀であったからこそ、東京という大都会にやってきてそれなりの成功を収めたはずだ。

 

そして自らの努力によって得た成功を、自身の子どもにも望むのは当然だろう。学歴社会を生き抜くために教育への投資を惜しまないはずだ。それだけ熱心であれば、子どもも優秀である可能性が高い。

 

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