もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

サバンナと動物園のシマウマ、どっちが幸せか?

入居者の安心安全を最優先にしたホーム運営に対し、一刀両断で全否定することはよくありません。しかし、私の個人的な意見を言わせていただくと、老人ホームは病院ではありません。喜怒哀楽が普通にあってしかるべきなのです。

 

小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)
小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)

老人ホームに入居すると認知症になってしまうという人が多くいますが、それは自宅で一人で生活をしているときと違い、安心しきってしまうことによるものではないかと思っています。つまり、緊張感がないということだと思います。高齢者が、一人、自宅で生活をするということは、一定の緊張感を持って生活をしているはずです。当然、自宅に自分しかいないのであれば、自分がしっかりしなくてはと思います。

 

しかし、老人ホームに入居したとたん、多くのことを介護職員らが助けてくれるので、次第に緊張感がなくなっていきます。適切な表現ではないと思いますが、わかりやすく言うと、サバンナにいるシマウマと、動物園にいるシマウマの違いかもしれません。

 

サバンナではシマウマは自由です。しかし、食物連鎖の上位者に補食のために殺されるリスクが常にあります。それに引き換え、動物園は平和です。何もしなくても定時には餌が出てきて、寝床は飼育員がきれいに掃除をしてくれるので何もやることはありません。シマウマの立場に立って、どちらが本当に幸せなのか? ということを考えてみると、その答えは難しいものになります。

 

看護師ホーム長の管理するホームは、間違いなく安心、安全です。健康に対する知識や技術は伊達ではありません。しかし、繰り返しになりますが、老人ホームは病院ではありません。自宅と同じ、在宅です。病院のように完璧である必要がどこまであるのでしょうか? 不完全な所だからこそ、高齢者の住まいとしては意義のある所なのではないでしょうか? でなければ、老人ホームというカテゴリーは、そもそも社会の中で要らなくなってしまいます。すべてを病院で対応すればよいからです。

 

別の視点から考えた場合、次のようなトラブルも発生します。看護師が老人ホームの特性を理解し、自分がしっかりしなければならないと自覚した場合、人によっては自分がすべてをコントロールしようと考えます。

 

月2回往診に来る主治医に対し、入居者の見立てを主治医に助言し、意図的に主治医を誘導してしまうという現象です。主治医にしても、たまにしか来ない自分の見立てよりも、日々そばにいて様子を観察している看護師のほうが入居者のことを理解していると考え、看護師の言うがままに指示を出してしまうケースもあります。

 

看護師が自身の業務を軽減する目的から、看護師の判断である入居者は夜間の徘徊が激しいので睡眠薬の投与をしたほうがよいとか、熱が下がらないので大事をとって病院に入院するべきであるなどと主治医を誘導し、家族には「主治医の判断です」という伝家の宝刀を抜いて、いかなる反論もねじ込んでしまうケースです。看護師業務としては、明らかに越権行為になりますが、書類上は「医師の指示」ということになるため、すぐには問題になることはありません。

 

主治医が代わったり、同僚の看護師が代わったりした場合に、この問題行動は露見されるパターンが多いと思います。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

 

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