南さんが迎えに来ると笑顔でデイサービスに
南さんが大好き
わが家のじーじは、昭和3(1928)年生まれの満州育ち。認知星人に変身すると、皇室や戦争に関するビックリ話が多くなる。
「先ほど皇室会議で、8月15日以外はすべて休日になったと通達があったから、れーこにも伝えておく。関係する部署には早急に伝えるように。これから日本は変わるからな」
「了解しました。通達します」
……とほほ、なんのことやらさっぱりわからんが、認知症の人が言うことを否定してはいけません。だからね。まぁ、じーじの暦が、そうなったということで、よしとしよう。
そして次の日、じーじは、7時になっても起きてこない。
「デイサービスに行く支度をしないと間に合わないよ」と声をかけると、「8月15日以外はすべて休日になったと通達がきたと言っただろう。だから今日デイサービスは休みだ」。
ひえ~、昨日、自分が話したことを覚えてる。大したもんだ! なんて感心している場合じゃない。
私は今日も仕事の予定が入っていて、日中はじーじのお世話はできない。かといって、じーじを一人にしておくわけにもいかない。「今日はデイサービスですよ」なんて、まっとうなことを言ったところで納得するわけもなく。
……ピカッとひらめいた!
「先ほど、天皇陛下様から連絡があり、8月15日以外が休日になる案は、一旦保留になったとのことです。なので、本日、デイサービスに行ってくださいとのことでした」と、厳粛な口調で言ってみた。
「そうなのか、でもなあそこのデイサービスには憲兵がいてな、賄賂を渡さないといかんのだ。今日は、賄賂を渡すほどの金を持っていないから行かないぞ」
そ~きたか、なんだかんだ理由をつけて、デイサービスに行かない方法を口にするじーじ。なんとか着替えをしたものの、「今日は行かない」の一点張り。もうすぐ送迎の時間だしどうしよう、と思っていたその時。
ピンポ~ンとチャイムの音。
「黒川さんおはようございます」
じーじの大好きな、南さんの声。
すると、急に地球人に戻り、今日もニコニコデイサービスに出勤したのであった。めでたしめでたし。
じーじの時間割
5時30分~7時30分 起床
通常は5時30分ごろに起床するが、夜な夜な家中を徘徊している時は7時30分まで寝ている。どういうわけか、私が仕事で早く出かけなければならない時に限って、朝起きない。
9時20分 デイサービスへご出勤
朝、どんなにご機嫌ナナメでも、大好きな南さんが来ると満面の笑顔で車に乗り込む。
17時~19時 帰宅・夕食
必ず郵便受けの中身を確認する。夕刊を取るのはじーじのお仕事。新聞休刊日は、悲しそうな顔をする。毎晩350mlのビールを飲み、入れ歯をカクカク言わせながら1時間以上かけて食べる。最近嚥下が悪くなりむせることが多くなった。ゲホゲホした瞬間に、口の中の食べ物と入れ歯が飛ぶので、一緒に食べるわれわれは、いつでも防御できる体制をとっている。
20時30分~21時 就寝
たいてい掛布団をかけないで寝ているので、真冬は「ここは満州より寒い」と言って怒る。準夜勤ちゃんの報告によると、しばしば夜中に起き出し家の中を徘徊している。
黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者
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