実は認知症のタイプにより症状や経過が少しずつ異なり、経過も治療も予後も介護の仕方も違ってきます。正しい診断を受けているか判断するためにも、認知症についての知識を深めておく必要があります。今回は、医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長の梶川博氏、医学博士である森惟明氏の共書『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「前頭側頭型認知症」について詳しく見ていきましょう。

初期症状は「記憶障害」とは限らない

初期症状が記憶障害とは限らず性格変化(前頭葉から病変が始まった場合)や言語障害(側頭葉の病変から始まった場合)で始まることがあります。前頭葉や側頭葉とはいわゆる「人間らしさ」を司る部位で、主に前頭葉では意思、思考、感情を、側頭葉では言語(優位半球)、聴覚、味覚、判断力、記憶を司っています。

 

このいずれか(もしくは両方)に障害が起こるため、ピック病では「人格の変化」、「性格の変化」、「わが道を行く行動」が最も特徴的な症状となります。記憶障害は比較的軽度とされています。他人の気持ちを思いやることができず、善悪の判断も難しくなるので、万引きや備品の持ち帰りなどの社会的ルールを無視する行為を平気でするようになります。

 

また性的な理性が働かずに痴漢行為をする(品行の障害・脱抑制)、不潔でも気にならないので何日も入浴しない(清潔さと整容の無視・無関心)、気に入らないことがあると周りの人を殴る(共感の減少、抑制の減少、人格変化)、などの言動もみられます。

「いつもと同じ」行動で、落ち着くことができる

一方で、ピック病の人には「毎日同じことを繰り返す(常同行動)と落ち着く」という一面もあります。ピック病の患者さんは暴力的、強迫的、脱抑制的行動にみえますが、毎日同じ道を散歩する、毎日同じ時間に入浴する、毎日食事の後に同じ言葉をかけるなど、「いつもと同じ」行動をとるように働きかけをすれば、無意味に暴れるわけではないのです。

 

行動・心理症状(BPSD)が強いため、介護者の負担が大きいので、介護者への配慮を怠らず、介護施設への紹介を早めに行うことです。またBPSDに対して鎮静的な薬剤を過剰に使用しないようにする注意が必要です。

 

注意:本書で紹介している治療法等は、著者が臨床例をもとに執筆しております。万一、本書の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。 また、本書に記載している薬剤等の選択・使用にあたっては、医師、薬剤師等の指導に基づき、適応、用量等は常にご確認ください。

 

 

※本記事は連載『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』を再構成したものです。

 

 

梶川 博
医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長

 

森 惟明
医学博士

 

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改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

梶川 博、森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

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