
新型コロナウイルスの影響が長引き、世界経済は厳しい状況下に置かれています。ところが一方では、米国株は史上最高値圏、日本株も29年ぶりの高値となっています。このような、実体経済と株価との乖離を目の当たりにすると、「もしやバブル?」と懸念を抱くかもしれません。従来型のバブルとはまた違う、見極めの難しい局面において、なにを「バブルか否か」の判断基準とすればいいのでしょうか。元バンカーの経済評論家・塚崎公義氏が解説します。
株高は当然!?「平成バブル」に人々が考えていたこと
これに対し、平成バブルは「だれが見ても株価や地価は高すぎるからバブルだ」というものではありませんでした。「日本経済が米国に勝って世界一になったのだから、株価や地価が高いのは当然だ。いままで安すぎたのが修正されているのだ」と考えていた人が多かったのです。
政府日銀も、バブルの可能性を疑っていた人はいたようですが、確信を持って「これはバブルだから早めに潰そう」という決断はできませんでした。そればかりか、政府日銀のなかにも自宅を購入した人がいたようです。
バブルだと思っていれば、今日買って明日売るような株の短期売買に手を出すことはあっても、自宅を買うことはありえません。バブルが崩壊して地価が暴落してからゆっくり買えばいいのですから。つまり「いまがバブルだ」という認識は、日本経済を動かしている人々の間でも共有されてはいなかったというわけですね。
そうした状況下、一般庶民のなかにはバブルに踊るつもりなど毛頭なかったのに、結果としてバブルの高値で自宅を購入した人が大勢いたわけです。「いま買わないと、一生自宅が持てずに借家暮らしをすることになってしまう」と考えたからです。当時はいまよりはるかに自宅所有が重要だと考えられていたので、仕方なかったというわけですね。
最後には、政府日銀によるバブル潰しが行われましたが、それも「バブルだから潰す」というのではなく、「地価が上がりすぎてサラリーマンが自宅を持てなくなって困っているから」という理由でした。
バブルのときには多くの人がハッピーなので、バブルを潰そうとすると反対運動が起こります。それに対して「これはバブルかもしれないから」という理由だけでは説得力に欠けますし、そもそも「絶対にバブルだ」という確信も持てなかったのです。
筆者が活用する「バブルを見破るための4条件」を紹介
バブルか否かはバブルの最中にはわからず、バブルが崩壊してはじめて「バブルだったのだ」とわかるものです。そこで上記のように、バブルだと気付かずにバブルに巻き込まれてしまう可能性は、だれにでもあるわけです。
では、少しでもそういった可能性を減らすことはできないのでしょうか? じつは、なんの手掛かりもない、というわけではありません。筆者は自分なりにバブルを見破るための4条件というものを使っていますので、それをご紹介します。
(1)「バブルかもしれない」と考える人に対して、正当な理由があって値上がりしているのだから、バブルではない、と説得する人が出てくる。
「日本経済は米国に勝って世界一になったのだから、株高は当然だ」といった具合ですね。これに「今回はいままでと違う」という言葉が混じるようだと、バブルの香りが一気に増すことになります。
今次局面では、「いままでと違う」というよりは、「金融緩和が続きそうだから相場は崩れないだろう」という平凡な理由が主なので、この条件には当てはまらないかもしれません。
(2)景気が絶好調なのに、金融が緩和されたままである。
普通は、景気が絶好調のときにはインフレになって金融が引き締められ、株価や地価が下落するのですが、平成バブル当時はプラザ合意後の円高によって物価が安定していたことから、金融の緩和が続き、バブルが拡大することができてしまったのでした。
今回は景気が絶好調の反対で不況なので、そもそもこの条件に当てはまるか否かを検討するべきではないでしょう。
(3)いままで株に興味のなかった人々が、突然株を買いはじめる。
井戸端会議で隣人の話を聞いて帰ってきた配偶者が、「株って儲かるらしいよ。お隣でも儲けられたのだから、自分だって儲けられるはず。買ってみる!」などといい出したら、読者は持っている株をすべて売りましょう(笑)。
この点については、ある程度当てはまっているようです。日本でも投資をはじめた初心者が大勢いるようですし、米国では「ロビンフッド」というアプリによる手数料無料の取引によって、投資をはじめる若者が急増しているとも聞きますから。
(4)国内外で温度差がある。
平成バブルのとき、国内の人は雰囲気に酔っていましたが、海外では冷静な見方も多かったようです。米国のITバブルのときには、米国に出張した人ほど米国経済の素晴らしさを熱弁するようになっていたので、筆者は「出張するとバブル熱に罹患するから出張したくない」と考えたものでした(笑)。
この点については、今次局面では日本と米国の温度差というよりも、株式投資をしている人としていない人の温度差があるようですから、ある程度は当てはまっているのかもしれません。