高齢な親をほっとけないと、介護を見越して同居をするパターンが増えています。その際、親が暮らしやすいようにとリフォームをした場合、その代金を巡って親族間のトラブルになるケースがあります。編集部に届いたそんな相続トラブルについて、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の北川聡司税理士が解説します。

解説:介護を見越してのリフォーム代は贈与になる?

子ども名義の家屋に親がお金を出してリフォームして同居をする……世間一般にこのような事は多くあると思いますが、実はいろいろな論点がある事例です。

 

■ リフォーム代は贈与となるのか

民法には「不動産の付合」という定めがあります。

 

(不動産の付合)
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。(以下省略)

 

難しい言い回しですが、親がリフォームした部分の所有権は、家屋の所有者である子どもが取得するということです。親がお金を出している場合には、リフォーム部分(税務的には工事代金の70%相当額)が贈与となります。

 

■ 介護を目的としたリフォーム工事の贈与税

贈与となる場合、贈与税の課税についても論点が生じます。

 

相続税法は「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」に対しては贈与税を課税しないと定めています。

 

そのため、介護を目的としたものであれば非課税と思われるかもしれませんが、これはケースバイケースです。

 

非課税とならなかった事例として国税不服審判所での争いがあり、子どもの所得が多かったことを理由として「生活費に充てるため」という部分が該当せず、非課税にならないという判断がなされた事例(平成29年5月24日)がありました。

 

介護目的にもかかわらず、リフォーム費用を考慮しても子どもに生活するために十分な収入がある場合、リフォーム費用は子どもが負担しないと贈与税を課税するというのが国の考えのようです(納税者にとって厳しい判断です)。

 

■ 特別受益になるのか

次に、リフォーム工事は特別受益の対象となるのでしょうか。

 

特別受益とは、相続人の中に亡くなった被相続人から遺贈や生前贈与を受けた方がいた場合に、これらを遺産の前渡しとする考えです(民法903条)。

 

本事例にもあった子どもが自宅を購入する際の資金援助は特別受益に該当するものとして列挙されていますが、介護のためのリフォームが特別受益となるのかについては家庭裁判所の判断になりそうです。

 

親の状況に応じた介護の要否、リフォームの内容(介護のための最小限の工事なのか、ほぼ全面リフォームのようなものなのか)によっても判断が分かれるのではないでしょうか。

 

■ 寄与分は生じるのか

一方、自宅で親の介護をしたことにより、老人ホーム等に入居せずに済んだ場合には、親の財産を維持したとして寄与分が認められる可能性があります。

 

2019年7月の相続法改正により、親族が介護していた場合には特別寄与の定め(民法1050条)が新設され、お嫁さん(子どもの妻)が介護した場合も寄与分の請求ができることになっています。

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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